第三章 青空は満開の桜の上 三

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「西園寺、腹が減った……」  俺が、ラーメンが食べたいと言うと、西園寺がラーメン店に入ってくれたのだが、食べようとすると店員が困っていた。 「こんな濃い味付けは、まだ無理ですよ」  麺は噛めないので諦めても、せめてスープだけでも口に入れたい。俺が必死に食べていると、西園寺がスプーンで口に入れてくれた。 「……味が……」  俺の頭は味を理解しているのに、身体の方が怖がっているようだ。味に慣れない舌には、濃いというのが、怖い食べ物のようになっていた。 「熱かったですか?」  西園寺が冷ましながら、麺を刻んで口に入れてくれたので、つい肉なども食べてしまった。 「麦茶です……お腹、壊さないといいですけど……」  店員が心配そうに俺を見ていた。 「……」  確かに、消化できていない感じはあるが、俺は満足できたので、それでいい。西園寺の膝に座って食事をすると、麦茶を飲んだ。 「しかし、天使ですよね……子供は天使と言いますけど、アルビノなのですか?色がなくて、透けそうな肌ですね」  正直に不気味と言ってくれてもいい。どう見ても、髪は白いし、肌も同じ色だし変であろう。 「こんなに綺麗な子は、初めて見ましたよ。人形ですね……動いているのが不思議なくらいだ」  動いているだけではない、ちゃんと排泄もするし、ゲロも吐く。 「西園寺、腹一杯になった。ありがとう」 「もう、こんなにしっかり喋れるのですか!凄いですね!」  西園寺は俺に頬擦りすると、ラーメンの残りを食べてくれた。 「満足しましたか?」  人前で余り喋らない方がいいかもしれない。俺が頷くと、店員が手を振ってくれた。
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