第三章 青空は満開の桜の上 三

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「本村、西園寺は元部下でしょ?どういう人間だった?」 「優秀でしたよ。公安に引き抜かれるくらいですからね」  でも、西園寺は幼児誘拐で売買されていると知り、売られる前に助けるのだと、現場に一人で乗り込んだ。幼児は助けたが、西園寺は大怪我をした。 「その時、幼児達は助けましたが、犯人とその組織は逃げました……」  緻密で地道な捜査が必要だったと、西園寺は責められた。でも、捜査を待っていたら、幾人もの幼児が売られてしまった後だったろう。西園寺は正しい面もあるのだが、組織としての行動ではなかった。 「相馬さんも、すごい配置をしましたね」  相馬は、何を狙って俺を第九公安部に移動したのであろうか。 「さてと、買い物して帰りましょう」  本村は、俺の金は要らないといい、カードで大量の買い物をしていた。 「夏目を、姉と妹に見られてしまいましてね……」  本村は一人暮らしで、彼女は多数いても家には入れない主義であった。本村は幼い頃の病気が原因で、子供ができないと言われていたので、家は姉が継いでいた。その姉に、俺の面倒を見るには何が必要かと質問し、逆に何か月なのかなど質問で返されたらしい。困った本村は、俺の写真を送ってしまい、あっという間に拡散されてしまった。  本村は、姉と妹からアドバイス攻撃を受け、更に両親から祝福メール?が届いたらしい。 「祝福?」 「そう。養子にしなさい。俺の老後が心配だったとかさ……そういうもの」  本村の実家は実業家で、富豪とも呼べる状態だった。本村の姉は複数の会社を経営していて、両親も現役で会社を経営していた。本村の妹は嫁いでいるが、官僚の家で、同じく金に困っていなかった。  そんな一族に、元地下社会の人間が関わるわけにはいかないだろう。 「俺の経歴は知っているでしょう……」 「夏目は、経歴を気にしているけど、それは問題にもならない家族だからね……」  それよりも問題なのは、本村の姉は押しが強く怖いという事であった。 「動画を送ってしまったら、服が汚いから送るとか、早く風呂に入れろとか、靴下を履かせなさいとか、あれこれ言ってきてね……」  画面を本村が見せてくれたが、本村の姉、純花(すみか)は弾丸のように喋って、怖いくらいであった。内容は、アドバイスのようなのだが、高飛車に言うので、まるで脅しのようであった。 『こんなに綺麗な子供、見た事ないくらいなのに、どうして汚れた服を着せているの!私のブランドの服を送るから着せなさい!』  俺の服は汚れているのか。確かに、床や壁を触りまくっているので、土まみれにはなっているが、洗えばいいだけだろう。 『何なの!こんなに人形なのに、動くの!!天使!!!!羽が生えていない?目が青くてガラスみたいで、色は真っ白なのね……髪も真っ白で……この世のものではないみたいね。崇守(むねもり)連れて来なさい!』  崇守は本村の名前であった。  本村の声も小さく聞こえているが、純花に押されてしまい、消えてしまいそうだった。
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