第四章 青空は満開の桜の上 四

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 本村があぐらをかいて座り、俺を膝の上に乗せた。本村とは、寮などで同室になり、ある意味では一緒に住んでいたので、あまり気を使わない。でも、ここまで接近してスキンシップをしたのは初めてかもしれない。 「本村、上からの花見もいいけど、俺は桜の下から見たいな……」 「じゃ、行くか」  でも、その前にと、本村は買っていた荷物の中から、服を取り出していた。それは、小さな服で、誰のだろうと思っていると、本村が必死になって俺に着せようとしていた。 「あ、軍のジャンパーみたいだね」 「そう、ズボンも合わせて買ってみた」  でも、サイズがかなり大きい。そこで本村は服を着せるのを諦めて、うさぎのぬいぐるみのようなものに、俺を入れていた。 「……これは、何?」 「姉がね……注文していたのを、引き取ってきたよ」  俺に着せたら動画を送れと、脅されているらしい。でも、頭まですっぽりと包まり、着心地は良かった。 「ごめん、本村。歩くと時間がかかるから、このまま抱えて、持って行ってくれるか?」 「いいよ」  花見には酒だと思ったが、それは却下され、温かいスープを持った。本村は、本当に明日は仕事のようで、ホットコーヒーを持っていた。 「シートとタオルケットを持って、片手しか空いていないからさ。夏目、しっかり捕まっていてね。落ちないでね」 「了解!」  俺が本村の腕にしっかりと捕まると、本村が微かに微笑んでいた。 「温かいな……しかも、軽い……」
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