うつつ2

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「僕よりは早く帰れると思うしね」  いくら幼なじみでも一応は歳の近い男女だ。 「あなたは、それでいいんですか?」  思わず聞いてしまった。 「それでとは?」 「いえ、何でもありません」  ひかりは、和明に表情をうかがわれていることに耐えられず、下を向いた。 「ああ、家賃や食費かあ……僕は、構わないと思っていたけど、家計を守っているのは君だしね。悪いがその辺りは二人の間で取り決めてもらえるかな」  和明の用事はすんだらしく、それ以上は何も話さなくなった。  和明が、亮をこの家に住まわす理由についてあれこれ思案したが、研究のためではないかという結論にいたった。でなければ、意味がわからない。  和明は浮世離れしているが、一応は、ひかりと男女の関係になれたのだ。まさか、世の男性が等しく自分のように淡白であると思い込んではいないだろう。亮とは、幼馴染でしかない。しかし、幼い頃ならまだしも、大人になってからは一つ屋根の下で寝泊まりしたことはない。  男性の衝動が、女性の比ではないことは、知識としてある。何も起きないとは言いきれない。  和明は食事を終えたあと、書斎にこもった。
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