うつつ2

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 翌日、和明はいつも通り大学へでかけた。ひかりは家事を終え、WEB小説を読み進むことにした。集中力にかけ、頭に入ってこない。  先がわかりやすい展開でも、一応は気になる。しかし、主人公の女性研究員がバカにしか思えない。  研究のしすぎで、ああいう人たちは感覚がおかしくなっているのだろうか。  和明も似たようなものだ。意外にそれがリアルなのかもしれない。  やはり、部屋を貸すのをないことにしてほしい。今夜にでも和明に頼んでみることにした。理由を問われたらなんと返そう。一緒に暮らすのはおかしいと、思ったままを伝えてもいいだろうか。  名案は思いつかないまま、夕方になった。珍しく和明から電話が入った。何事かと思いながら出る。 ――喜多川君が来てるんだ。僕はまだ帰れないから迎えに来てやってくれないか。  昨日の今日でなぜ京都にいるのか。 「家に呼ぶんですか?」 ――早くなれてもらった方がいいだろう?  良いわけがない。 「突然すぎます。寝具も用意できてません」 ――寝具は僕のを使ってもらえばいい。彼の話がもっと聞きたいんだ。  何を言っても変更は無理だと諦めた。 「食事は家でとりますか?」  和明はできるだけ早く切り上げて帰ると言った。  亮と会うこと自体が久しぶりで、いきなり、家に泊めることになるとは思わなかった。  途端に、苦痛になってくる。  ひかりは引きこもりがちなせいで、変化に対する耐性が弱くなっている。  大学に着いたら電話をいれるように言われた。  服を、着替えなければならない。和明の上司や同僚に会うかもしれない。気合が入っていると思われない程度に、きちんとした服装を選ぼうと決めた。クローゼットをあけて、中をみた。これだと思える服がない。  家からは五分ほどしか離れていない。あまり待たせると、変に思われる。  ひかりは大人しめのワンピースに着替えた。どうせロングコートに隠れると気づいた。  正門前につき、電話をかけた。
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