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翌日、和明はいつも通り大学へでかけた。ひかりは家事を終え、WEB小説を読み進むことにした。集中力にかけ、頭に入ってこない。
先がわかりやすい展開でも、一応は気になる。しかし、主人公の女性研究員がバカにしか思えない。
研究のしすぎで、ああいう人たちは感覚がおかしくなっているのだろうか。
和明も似たようなものだ。意外にそれがリアルなのかもしれない。
やはり、部屋を貸すのをないことにしてほしい。今夜にでも和明に頼んでみることにした。理由を問われたらなんと返そう。一緒に暮らすのはおかしいと、思ったままを伝えてもいいだろうか。
名案は思いつかないまま、夕方になった。珍しく和明から電話が入った。何事かと思いながら出る。
――喜多川君が来てるんだ。僕はまだ帰れないから迎えに来てやってくれないか。
昨日の今日でなぜ京都にいるのか。
「家に呼ぶんですか?」
――早くなれてもらった方がいいだろう?
良いわけがない。
「突然すぎます。寝具も用意できてません」
――寝具は僕のを使ってもらえばいい。彼の話がもっと聞きたいんだ。
何を言っても変更は無理だと諦めた。
「食事は家でとりますか?」
和明はできるだけ早く切り上げて帰ると言った。
亮と会うこと自体が久しぶりで、いきなり、家に泊めることになるとは思わなかった。
途端に、苦痛になってくる。
ひかりは引きこもりがちなせいで、変化に対する耐性が弱くなっている。
大学に着いたら電話をいれるように言われた。
服を、着替えなければならない。和明の上司や同僚に会うかもしれない。気合が入っていると思われない程度に、きちんとした服装を選ぼうと決めた。クローゼットをあけて、中をみた。これだと思える服がない。
家からは五分ほどしか離れていない。あまり待たせると、変に思われる。
ひかりは大人しめのワンピースに着替えた。どうせロングコートに隠れると気づいた。
正門前につき、電話をかけた。
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