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先制するも戦車閃光
旅人の高橋は、あてのない旅を始めるところだ。神保町の町内から今旅立つ。本の町として名高い神保町から旅立つなど、なんて贅沢なことだろう。
町内から歩いて行けるところまで行くのが高橋の目的だ。思うがままに歩く。気が向いた方向へ進む。ああ、なんというぜいたくな旅だろうか。ブラックコーヒーも冷めるほどのありふれた一人の人間の行動に、太陽も熱を隠せない。
しかし、旅とは過酷なものだ。必ずと言っていいほど、車からのぼる煙のようにご丁寧な邪魔が入ってくる。すなわち、見なかったことにしたいが無視できない。
高橋の元には富豪の山本がやってくる。太って態度がでかい富豪の山本はこう言った。
「旅人の高橋。お前はくそだ。何の目的もなく、ひたすら歩いてどこまでも行こうというその適当な姿勢。まったくくその役にも立たない。まだ俺の会社で働く社員奴隷のほうが社会貢献してると言える。お前は早く死んだほうがいい。生きてる価値がない」
ああ、富豪の山本はこんなひどいことを言うのだ。旅人に対してなんと失礼なのだろう。しかし、旅人の高橋は気にとめない。
「そうですね」
そう言って歩き続ける。まったく見慣れた腕時計のように無表情のまま歩き続けるのだ。
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