先制するも戦車閃光

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「てめえこの野郎!金もねえくせにどこに歩いていこうってんだ!てめえみてえな金も才能の体力もねえくそ野郎がどこかに行けるわけねえだろう!死ね!」 そう言って、山本は光り輝くトロフィーを持って高橋に向かって殴りかかる。トロフィーは金色で栄光の証。 それはかつて高橋が手に入れたものだったが、もう高橋にとっては不要なものだった。 トロフィーの像の右手が高橋の後頭部にぶつかるが、高橋の石頭はトロフィーを粉々に砕いてしまった。意思の固さが頭を石のようにしているのは言うまでもない。 「このくそ固い頭め!許せん!てめえはどうせ書を捨てて旅に出ることはできねえんだ!都会でのたれ死ぬんだ!」 そう言って山本は戦車を持ち出してきた。 なんということだ。神保町3丁目の交差点に戦車が現れる異様さ。しかし、山本は金持ちなので、これぐらいは朝飯前。金こそが権力であり、金があれば法律も人々の態度もある程度はいじることができるのだ。ああ、成金の行動のなんと清々しいことだろう。 神保町3丁目の交差点で戦車を眺めている高橋の目は清んでいる。 「そうですね」 ナップサック一つでとぼとぼ歩く高橋は、その一言しか話さない。 「高橋!てめえは俺を怒らせた!だから死ね!」 山本は戦車に乗り込み、戦車から弾を発射した。高橋に弾が向かっていく。 ああ、高橋は東京という籠から一歩も出ることができないまま人生という名の旅を終えるのか。
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