阿修羅、悪役を圧倒

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「一座!今日こそてめえらの死体を見せてくれよ!俺達のデス応援で今日こそ死んでくれ!」 火炎放射機を持った凶悪な顔の男は、満面の笑みでこう言うのだ。彼の笑顔は素直な中学生男子のごとく輝きに満ちあふれていた。ああ、人殺しの目はなぜそんなに輝くのか。ちなみにこの凶悪な男は火炎放射の矢野という。 火炎放射の矢野が放った炎が届く前にジープは猛スピードで発進した。 ジープは凸凹な地下道を懸命に走っていく。 地下道にはあちこちに穴があり、穴から凶悪な顔をした男どもが飛び出てきて、攻撃を仕掛けてくる。 ハンマーを持った傷だらけの顔の男がジープに飛び乗る。ハンマー男のハンマーが阿修羅の腕に巻き付いてしまう。 「東京の地下には、こういうゴロツキ犯罪者どもが住む地下道が無数にあるんだ。うちら一座の仕事はこういう犯罪者ども相手に死のショーを見せることさ」 阿修羅の水木はそう言って、2番目の右手と1番上の左手でハンマーの鎖をつかむと、そのまま勢いをつけてハンマー男をジープの荷台にたたき付けた。器用に鎖を解いてハンマー男に巻付けると、そのまま6本の腕で投げ落とす。 ジープから勢いよく落ちたハンマー男は火炎放射の矢野のボディに激突し、2人で仲良く地下道に倒れ込んだ。 「高橋さん、気をつけな。うちらの旅は毎度こういう危険の連続さ」 「そうですね」 高橋の無表情の決まった返答は頼もしくもあった。 阿修羅の水木は、青竜刀を持ったゴロツキを突き飛ばし、ナタを持った犯罪者を蹴飛ばし、ナイフを持った変態を頭突きして吹っ飛ばす。数々の凶悪な男どもをものともしないその姿は、戦いの女神のようにも見えた。 「さすが阿修羅さん。車載のカメラでしっかり生配信中ですが、順調に投げ銭も増えていってます。やっぱり命懸けの戦いは金になるんですね、残念ながら。過激さばかり求める人間のサガにピエロの顔もくもりますよ」 そう言って山脈の大木はピエロの顔を歪ませる。 「そうですね」 高橋は決まった返答スタイルを崩さない。
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