阿修羅、悪役を圧倒

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ジープは一通りの犯罪者を蹴散らし、地下道をなおも走る。遠くで地下鉄が走る音が聞こえる。この列車の音こそ、旅の醍醐味と言えるだろう。だが、この一座の旅は地下鉄の音に耳をすませる暇もないほどにせちがらい。 「前方に巨大な物体!」 怒りの面を前に向けた阿修羅が唐突にそう叫んだのも無理はない。 ジープの前方約100メートルの距離に巨大な大仏が突如現れたのだ。 しかも大仏は両肩と指の間からマシンガンを発射しようと構えているではないか。 大仏の背後から富豪の山本がひょっこりと顔を出し、テストで高得点を取った小学生のような満面の笑みで叫んでいる。 「一座!てめえらは今日こそ死んでもらう!俺が雇った犯罪者どもを何人も再起不能にしやがって!もともとてめえらは俺が用意した殺人ショーのいけにえだったんだ!図々しくも生き残って脱走しやがって!」 ああ、富豪の山本の分かりやすい説明台詞に対し、山脈の大木はため息をつくしかない。 「まったく金持ちというのは、なぜ何でも思い通りになると考えるのでしょうか。ねえ、高橋さん?あなたも彼の横暴さから逃れたかったんでしょう?」 「そうですね」 高橋の返答がこれほどまでに綺麗にハマることもなかなかない。 「てめえらは危険だ!旅立たせはしない!そして高橋!てめえも旅は道ずれで死亡だ!」 山本は怒り狂った表情と共に、マシンガンを撃ちまくる。スピードを止めないジープに、弾丸の雨が降り注ぐ。 ああ、あまりに弾数が多い。一座と高橋の旅はこれで終わってしまうのだろうか。
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