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いや終わるわけがない。
高橋は大きく手を伸ばし、5メートルはあろう大仏を持ち上げる。そして、顔を真っ赤にさせながら逃げる山本に向かって大仏を投げつけるのだ。
富豪の山本の驚愕の表情と共に、地上マンホール付近で大仏爆弾が爆発した。
なんと罰当たりな、大仏に爆弾を仕込むなど。富豪の山本に罰が当たったと言えるだろう。
ジープはからくも爆風から逃れ地下道を走り抜ける。爆発のショックで地下道の壁が崩れ、退路をふさいでいく。この旅路は後戻りできないのだ。
「さすが高橋さん。弾だけでなく大仏までもさばくとは。その手さばきこそ、まさに我々一座が求めていたものです」
ピエロの顔をほころばせ、山脈の大木はジープの運転を続ける。
ジープは地下道を抜けて、さいたま市の草原に突入した。
「地上に出ました。しばらくは犯罪者も追って来ないでしょう。今日は草原のキャンプ場でキャンプします。きちんと場所もおせているんですよ、必ず生き残るつもりでしたからね」
「確かに」
ピエロが発した言葉に対し、お決まりのフレーズで返答した高橋。その顔には見たこともないような笑みが含まれていた。
確かなことなど何もない旅だ。いつ犯罪者に殺されるかもしれない。いつのたれ死ぬかもしれない。しかし、その不確かな未来こそ旅の醍醐味なのだろう。
満天の星空のもと、ジープは軽快にキャンプ場に向かって走っていく。
5月の風に吹かれた阿修羅が笑顔を見せると、高橋は笑顔で返した。一座の新たな旅は始まったばかりだ。
(終)
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