阿修羅、悪役を圧倒

1/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

阿修羅、悪役を圧倒

目を覚ますと高橋はジープの荷台に乗っていた。眠ったまま数時間経ったようだ。 あたりは薄暗く湿った空気が流れている。わずかな明かりが点々と光る暗く長いトンネルのような空間。どうやら地下道に連れてこられたようだ。 3つの顔と6つの腕を持つ阿修羅の女が荷台に上がってきた。高橋を見下ろし、阿修羅の女はこうささやく。 「起きたかい。いやあ、よくついて来たね。旅一座についてこれるか試すことになるよ。私は阿修羅の水原。よろしく」 穏やかな面の水原が自己紹介する。阿修羅と名乗るだけあり、6本の腕を起用に操りながら高橋の頭を左の一番下の手で叩いた。 ジープの運転席から頭に山脈をのっけているピエロがせせら笑いで振り向いた。 「やあ、目覚めましたか、高橋さん。旅先では簡単に水を飲んではいけないですよ。今のように睡眠薬が入っていたり、場合によっては死に至ることも有り得ます。気をつけて」 ピエロの薄気味悪い笑顔は、なぜこうも旅のざわめきを的確に表現してくれるのだろうか。これこそジャーニーの高揚という他ない。 「確かに」 高橋はそう返すことしかできないのだ。 「ちなみにピエロの顔をしている私は、山脈の大木と呼んで下さい。これから一座の旅をスタートさせます。地下道を走るので、振り落とされないよう気をつけて下さい」 「そうですね」 高橋は、規則正しく無表情でそう答える。 「気をつけな。私らが提供している出し物は命懸けさ。まず死なないことが第一だからね!ほら、地下道を走ってくる客のお出ましだよ!」 阿修羅の水木が険しい面を高橋に向け、そう語りかける。 ああ、なんという旅先の親切心。阿修羅の水木の言葉どおり、地下道を走ってくる集団が見える。 集団はいずれも凶悪な顔をした男達で、手には火炎放射機、爆弾、ナタ、ナイフ、青竜刀、ハンマー、チェーンソーなど色とりどりの武器を持っている。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!