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昼餉を終えた玉彦は案の定探しに出てきたらしく、石段の途中で私は捕まった。
やっぱり悪びれた様子の無い玉彦は塞ぎこむ私とは逆に上機嫌で手を取り、お屋敷へ戻るのかこのまま散歩へ繰り出すか聞いてくる。
この人は今日、どれだけのことを仕出かしたのか分かっていないのだろうか。
とりあえずお屋敷に戻ることを告げて石段を上り始め、玉彦の様子を伺う。
相変わらず綺麗な顔をした私の旦那様は、機嫌が良いことも相まって輝いて見えた。
それが無性に腹が立つ。
「長年の約束を果たせるというのは、喜ばしいことだ」
「あっそう……。私との旅行を無駄にしてまで喜ばしいことなわけね……」
「旅行はまた次の機会に行けば良かろう?」
「……次っていつよ。二年目の結婚記念日は今日だけ、一回だけだよ!」
「一理あるが……」
「一理も二理もあるわよ!」
声を荒げた私に玉彦が少しだけ身を引く。
空いた手で自分の額に手をやり、目を見開いた。
何をそんなに驚くことがあるのか理解不能だ。
私にすれば驚くことに驚くわ。
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