第十六章『事の顛末 宴の始末』

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「なんだよー。比和子ちゃんの危機の時しか駄目なのかよー。オレも見たかったなー」 「でもどうして到着地が三者の地だったのでしょうか。初代神守と何か関係があるのでしょうか」  残念がる多門と不思議がる竜輝くんに、玉彦がいつものお決まりの台詞を吐く。 「そういうものだからそういうものだと思え。恐らく行き先はその時々により変わるのだろう。必要な時に必要な場所へ。そうでなければ千年以上前の通路が落盤もせずに残っているはずはなかろう。兎も角。最優先事項は青紐の鈴ぞ」  玉彦の言葉に頷いた須藤くんが、先ほど井戸の水の流れを推察すると、水は七龍川方面へ流れているということを教えてくれたので、井戸の探索はこれで切り上げ、お屋敷外へと捜索の手を広げることになった。  よろしくお願いします、と立ち去る五人に頭を下げて、勢いよく姿勢を正して青空に顔を向ける。  初代の神守は、その眼で何を視て井戸を造ったのか。  一説によると未来まで見通せるという話だし、今回のことまで視えていたのだろうか。  ……いやいやまさか。  私一人の為にこんな大掛かりな仕掛けを施すはずがない。  きっと戦国とかその辺の時代を見据えて、正武家との問題以外の為もあったのだろう。 「戻るぞ。比和子」 「うん」  玉彦に手を引かれ、このまま部屋へ戻っても私たちには特にすることがなかったので、産土神の社前を通り、本殿へ向かうことにした。  金魚池を二人で覗き、社で手を合わせ、離れの外廊下に差し掛かり、玉彦は驚いたように胸に手を当てた。 「どうしたの?」 「鈴が……」  そう言った玉彦が懐から赤紐の鈴を取り出すと、揺らしてもいないのに鈴が微かに二回鳴る。
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