第十七章『蛇の眷属』

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「正体は、もしかして蛇?」 「うむ」  肯定する玉彦は目を伏せて、深く息を吐いた。 「緑林村の陣家は古くから杣人(そまびと)ととして五村の山で生活を営んでいた」 「そまびと?」 「今で云う植林し、育て、伐採する者だ。杣人が木を育てる山を杣山(そまやま)と呼ぶ。五村の山の半分はそういった者たちが管理している」 「へぇ」 「行平がまだ若く、先代道彦の時代に話は遡る」  伏せていた目を真っ直ぐに私に向けて玉彦は静かに語り始めた。  それは優しくも悲しく、そして憎悪に(まみ)れた物語だった。  行平さんは、正武家当主の澄彦さんよりも年上である。  長女の雅さんが玉彦よりも四歳年上なので、二人もそれくらいは離れているんだろう。  学校の学年でいうと丁度行平さんが美山高校を卒業してから澄彦さんや私のお父さんが入学することになるので、道彦という接点を除けば関わり合いは無かったのかもしれない。  行平さんは自分でも言っていたように、幼少の頃から不可思議なものが視えてしまう体質だった。  成長し、ある程度の社会性を身に付けると自然に人とそうでは無い者との区別がつくようになり、そして自分以外の人間には視えないものがこの世には存在していると認識した。  なぜ自分がそのようなものが視えてしまうのかはともかく、どうすれば普通の生活を送れるのか自分なりに色々と調べて、独自で身を護る術を模索していた矢先、出会ってしまった。  運命を変えてしまう、白蛇(しろへび)に。
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