序章

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「ならばまずは膝を詰めなくてはだな」 「うん……そうする」  素直にこくりとすれば、鈴彦は口元だけで笑う。 「次代とておぬしの気持ちを考えなかった訳ではないはず。しかしその者と会うことの方が旅よりも喜ばしいことだと判断をしたのであろう。その想い、汲み取ってこその妻であろう」 「はい……」  鈴彦に諭されて、私は項垂れる。  そうだよ。  玉彦は他人の気持ちなんてどこ吹く風だけど、とりあえずは私の気持ちだけは考えてくれる。  言葉足らずなのは玉彦の十八番だった。 「何が汲み取って、よ。そんなもの言葉にしないとわからないわよ。所詮、他人なんだから。大体鈴さまだって……!」  せっかく鈴彦が良いことを言ってくれたのに、片眉を上げたお竜が生前の鈴彦の言葉足らずのせいで騒動が起こったことを蒸し返して、熱く語り出してしまったのだった。
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