裏切りの後始末

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裏切りの後始末

ずずぅ~ ずずず~ 実家の邸の広間で、マカは不機嫌にそうめんをすすっていた。 そんな様子を、ヒミカとルナは複雑な顔で見ている。 「…とりあえず、二人には追っ手を差し向けているけど、そう簡単には見つかんないと思うわ」 「カズサの方は、マカとセツカのおかげで何とか回復には向かっているけど…。やっぱり裏切りの行為は本意ではないにしろ、あったことだから、幹部は降格処分になるだろうと、この間の会議で決まったわ」 「ふーん…」 「それで新たな幹部のことなんだけど…」 ルナが言葉を続けるよりも先に、マカは再びそうめんをすする。 ずずー ずるるるー 「…マカ。おもしろくないのは分かるけど、少しは聞く気になりなさいよ」 「聞いてる」 ヒミカの言葉もばっさり返り討ちにして、マカは表情を変えずに麺をすすり込む。 「はぁ…。とにかくカズサのおじさんがどこまで情報を洩らしていたかは今調査しているから」 「カズサはかなり情報を持っていたからね。でもそれを把握できれば、マノンの動きも大分読めると思うから」 「分かった。そっちは頼む」 麺を全てすすった後、マカは箸を置いた。 「私は両親の元へ行って来る」 「えっ!? まさか今回のことを…」 「言うわけないだろう。大体お前が言ったんだろう? ヒミカ。親にもっと会えと」 「言ったけどさぁ」 何かを察したルナが、ヒミカの服の裾を引いた。 ヒミカはルナの表情から、言いたいことを察した。 「まっ、いい傾向よね。会ってらっしゃいよ」 「調査の方は任せて!」 「ああ、頼む」 マカが部屋を出て行った後、二人はため息をついた。 「マカ…きっとリウのご両親のことを思って、会おうと思ったんでしょう」 「だろうね。リウの両親、大分ダメージ受けていたみたいだし」 リウの両親は、子供の裏切りを知らなかった。 その事実を教えられ、しかもリウが去ったことを聞くと、泣き崩れてしまった。 リウの両親も幹部から除籍される。 そして裏切り者の親というレッテルを、血族から張られてしまったのだ。 「リウのヤツ…。気持ちは分からなくはないが、あんなに可愛がってくれた両親まで裏切るとは、ね」 「…案外、リウにとってはそうじゃなかったかもよ? ご両親、リウの両足にかなりの負い目があったみたいだし」 「だけどそれはしょうがなかったことでしょう? いつまでも負い目に思ってちゃ、そりゃ逃げ出したくなるわね」 「本当の愛情かも、疑わしく思っちゃうものね」 しんみりしていた二人だが、不意に二つのケータイの着信音が響いた。 「あっ、キシからだ」 「こっちはアオイからだわ」 二人は顔を見合わせ、深くため息をついた。 「ウチの血族は男運、ないわね」 「言わないでよ。かなり気にしているんだから」 二人はブツブツ言いながらも、電話を受けた。 一方、両親がいる部屋に向かうマカの足は重かった。 「はぁ…。また厄介な存在がマノンの元へ行ってしまったな」 そう言いつつも、心の中でどこか納得している自分がいた。 二人とも生まれ付き、欠けた体を持っていた。 その補いたいという気持ちが昂り、二人は友となったのだろう。 もし同属でなければ―? 「いや、その考えは意味がない」 同属でなければ、二人は出会うことがなかった。 そして力が無ければ、暴走することもなかった。 「そして私には止める術がない、か…」 マカは不完全であることをイヤだとは思わない。 けれどその気持ちはあの二人には伝わらないだろう。 不完全だからこそ、愛しいと思う気持ちが生まれることを…。 【終わり】
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