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緋色の過去 麻衣 お誕生日会 (1/3)
どうにかギリギリのラインで3年生に進級出来た。
そして、真理子さんと知り合って一年が経過しようとしていた。
私は、真理子さんの誕生日をお祝いする計画を練っていた。
普段からお世話になっている。ささかなお礼の意味も込めて。
色々と考えた結果・・・。私の部屋にご招待して、そこで
誕生会を催す事にした。
真理子さんのマンションには、何度かお邪魔した事があるが
私の狭い部屋に真理子さんが来た事は一度も無かった。
誕生日は月曜日にあたる・・・前祝で土曜日に日にちは決定した。
そのメールを真理子さんにしたら・・・。
凄く喜んでくれた。「嬉しい!!何があっても絶対に行くよ!!」
私まで嬉しくなる様な返信が届いた。
居酒屋さんのバイト、土曜日は他の理由を伝えてお休みした。
プレゼントは池袋のデパートで悩みに悩んだ挙句に・・・。
革製のパスケースをチョイスした。通勤の時に使ってもらいたい。
そんな気持ちからだった・・・。
当日・・・今夜7時に真理子さんが来る!!!
朝から部屋を片付けて、掃除機を念入りにかけた。それが終われば
トイレの掃除・・・お風呂はどうしようか??
まさか・・・真理子さんが私の部屋でシャワーを使う??
無い無い・・・100%あり得ない・・・。お風呂は除外。
午前中をかけて完璧に掃除を済ませた。
部屋干しの半乾きの下着をトートバックに押し込んでコインランドリー
へと自転車を飛ばした。そして、乾燥機で乾かした・・・。
半乾きのままじゃ収納出来ない・・・。
私は料理が出来ないし、した記憶がない。その為料理は全て外部調達。
なにしろ朝から慌ただしかった。コインランドリーから帰宅して。
駅の反対側のケーキ屋さんに向かった。予約のケーキを受取る為に。
「こちらで・・・間違いないですね??」店員さんが梱包前のケーキを
見せてくれた・・・。
大きなプレートに「HappyBirthday真理子」キャンドルは・・・
長いのが4本・・・短いのが4本・・・44歳のお誕生日だ。
ケーキを持ち帰り冷蔵庫へ・・・。
そして私は、また外に飛び出し、持ち帰りのできる回転寿司へ向かった。
慌ただしかったけど、私の胸は躍っていた・・・。
早く真理子さんの喜ぶ顔が見たい。
回転寿司の途中に、大手チェーンのビデオレンタル店がある。
「ああ!!!そうだ!!!」私はひらめいた。
そこに飛び込み、目を皿の様にして音楽CDコーナーの、
あるカテゴリを物色していた。
「夜更けに聞きたいジャズ特集」・・・これじゃない。
「cafeで聞きたいBGM」・・・これでもない。
「誕生日に聞くオルゴール特集」・・・これだわ!!!!
それをレンタルした。
ある種の高揚感に包まれていた私・・・。
演出家になった、そんな錯覚に陥っていたのかもしれない。
高校時代、学際の前日、夜8時頃までみんなで残ってワイワイ
ガヤガヤと準備に飛び跳ねた・・・。あの楽しかった思い出が
蘇ってきた・・・。いつもの学校じゃない。何か特別な雰囲気
の空間にいる様な錯覚・・・。正に今、私の部屋がその空間だった。
ビールは前日に冷蔵庫へ・・・。ワインも用意した。
時刻は午後5時30分・・・。
シュミレーションを開始した。
①ローソファーに並んで座る。②電気を消してローソクを消してもらう。
③電気を灯けて「おめでとう」と同時にプレゼントを渡す。
④そして、ビールで乾杯!!!と同時にオルゴールCDをリモコンで
playモードに・・・。
この手順を、当時の私は日記帳の端にメモで残している。
可愛かったんだな・・・当時の私は・・・。
シャワー・・・どうしようかな・・・。
真理子さんが来る前にシャワーしておこうかな??
特段変な気持ちでの、何かを期待してのシャワーではなかった。
でも、シャワーをして待っていた事実を見破られるのも・・・
妙に恥かしい気がした・・・。シャワーはしなかった。
洗顔を済ませて、メイクを施し・・・着替えを済ませて。
7時になるのを待った。
午後7時、ちょっと高級そうな和菓子をお土産に・・・。
真理子さんが来てくれた。
「わ~綺麗に片付いてるね・・・」それが開口一番だった。
「当然ですよ、午前中かけて掃除しましたから・・・」
とは言えず。
「さぁ!!早く座って下さい」と真理子さんをローソファーに
導いた。長い長い夜・・・誕生日会の始まりである。
--続く--
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