第二章、三人の弟子

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「痛かったですか?」 この完全に馬鹿にされ舐め切られた態度に孫悟空は激昂を超えた怒りの感情を覚えた。 「こうなったらこのオイラ最強の術でお前をぶっ殺す!」 「あまり「殺す」と言うことはお使いにならない方が良いかと。殺すという言葉はとても禍々しい言霊を持っています。いつか自分に返ってきますよ」 「どんなものだっていつかは死ぬだろうが!」 孫悟空は頭から髪の毛を抜いて手のひらにそれを乗せ、ふぅ~と息を吹きかけた。 息を吹きかけられた毛は宙をひらりひらりと暫く舞い、金絲の糸を思わせる髪の毛は小さな孫悟空の姿となった。 「分身殺法! 身外身! あいつの全身をぼこぼこに削ってやれ!」 身外身。いわゆる分身の術である。体毛を引き抜き自らの霊力を込めた息を吹きかけることで自らの分身に変える。 相手の頸動脈に分身を飛ばし一撃で戦闘不能に至らしめることも出来る極めて危険性の高い術である。 「分身の術ですか。どうやら仙人としてはかなり格が高いようですね」 「当たり前だろ!」 分身のうちの一つが万象の喉元に辿り着いた。後は頸動脈に一噛みすればその場は鮮血が舞い踊り勝負は決する。万象の細い首は皮下脂肪も少なく頸動脈も浮き出ている程であった。その浮き出た血管に分身の牙が届くその刹那、万象はその分身をひょいと摘み上げた。そして蚊を潰すようにぐいと力を入れた。分身は髪の毛へとその姿を戻す。その間も分身達は万象の周りを飛び回る。 「鬱陶しいですね。カノ!」 炎を呼び出す印を切ったその刹那、周りを飛び回っていた分身は炎とともに燃え尽きてしまった。燃え尽きた分身達の姿を見て孫悟空はただただ呆然とするしか出来ないのであった。それを免れた分身達も物怖じし孫悟空の元に戻ろうとする。 「帰山!」 孫悟空は分身の術で飛ばしていた分身を全て自分の元に戻した。飛ばしていた髪の毛も元の場所に戻る。 「引き抜いた髪の毛を元に戻すことが出来るのですか。すごいすごい。世の中のハゲに悩む者たちのためにこの術を民にお教えしてはどうでしょうか」 万象はやる気の無い拍手をした。それを挑発にとった孫悟空の怒りの炎が更に燃え上がる。 「このオラの最強の術でお前を磨り潰してやる!」 「やれやれ。あなた先程最強の術をしたではありませんか? 分身の術は最強ではなかったのですか? 戦力の逐次投入で英雄(ヒーロー)に返り討ちに遭う悪党みたいなことをよくもまぁ」
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