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第三章、一行全滅の危機!! 瓢の空へ
万象達一行が長安の都を出てから数日…… 妖怪たちの群れは一行に対して容赦無く牙を剥くのであった。だが、孫悟空、猪八戒、沙悟浄の力に敵うものは誰一人としていなかった。彼らが打ち漏らしたものはスレイプニルの全てを踏破する蹄により踏み潰されるのであった。
いつしか妖怪たちの間では「あいつらが通った後は妖怪の屍しか残らねぇ白骨街道だ」と言われるようになっていた。数多の妖怪の屍の群れを踏みしだき辿り着いたのは小さな村であった。
その小さな村の名前は金銀楼。村の中には女子供しかおらず、大人の男の気配が無かった。しかし、広がるばかりの田畑は女だけではあるが農業はしっかりとされている様子であった。女しかいないことで猪八戒は興奮し臭い息をハァハァと立てていた。猪八戒の息があたるところにスレイプニルの鼻があるせいでスレイプニルは少々ご機嫌斜めとなっていた。
「今日はここで宿をとりましょう」
一行は金銀楼一番の宿屋で一晩の宿をとることにした。対応するのは勿論のこと女将であり、宿の中に男の気配はないのであった。
その日の食事中、食後のジャスミンティーが出されたところで沙悟浄が女将にふと尋ねた。この村に来てから気になって気になって仕方ないことである。
「どうしてこの村には男がいないのですか?」
すると宿屋の女将は目に涙を溜めてその場に蹲った。その場にいた一行が沙悟浄を白い目で見る。沙悟浄はいたたまれなくなったのか俯きながらまだ熱いジャスミンティーを啜ることしか出来なくなってしまった。
暫く泣いた後に宿屋の女将は重い口を開いた。知らぬ間に猪八戒が女将の肩を抱きよせて叩き慰めるようにぽんぽんと叩いていた。
「夫…… いえ、この村の男は皆働き手にされてしまいました」
「働き手? 農業か何かですかな?」
「いえ。数年前にやってきたあの兄弟のための像を作るための働き手です」
「あの兄弟?」
「金角、銀角と言う兄弟の妖怪です」
それを聞いた瞬間に孫悟空の全身の毛が逆立ち眉がぴくんと上がり目つきも怒りの目そのものとなった。
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