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そんな彼にも唯一の理解者がいた。それは近所に住む少年・ウォルターだった。ウォルターは剣術の師範をしている父を持ち、幼い頃から毎日のように厳しい練習をさせられていた。しかし、練習ばかりの日々に耐えかね、父と喧嘩し、道場を飛び出してしまうことも少なくなかった。そんなとき、決まって逃げ込むのがゼットンの家だった。
ゼットンはウォルターがやってくるといつでも歓迎し、大人の客人と同じように扱った。そして、これまで旅してきた様々な国の話を聞かせた。
ウォルターには彼の話の中でもお気に入りのものがたくさんあった。例えば、湖の上に浮かぶ国の話、火山の麓の洞窟にある国の話、鳥のように羽が生えた人々が暮らす国の話…。彼にとっては全てが未知の世界で、何度聞いても飽きないのだった。
「おじさん、すごいな。こんなにいろんな国を冒険してるなんて」
「いや、私は冒険なんてしていないよ。ただ話を聞いてくるだけさ」
「それでもすごいよ。父さんも母さんも、他の国に行くなんて危険だから無理だって言うのに」
ウォルターにとって事もなげに他国を旅し、自由に暮らすゼットンは憧れの大人だった。ゼットンのことを悪く言う人がいれば、自分のことのように怒り、彼のすごさが分かっていないのだと言い返すこともあった。ゼットンにとってみれば、ウォルターは小さな友人であり、心強い味方でもあったのだった。
「おれも大きくなったら冒険者になって、おじさんみたいに旅に出るんだ」
「ああ、君なら大丈夫さ。すぐに出られるよ」
ウォルターがそう言うと、ゼットンはいつも優しく励ました。ウォルターには剣術の腕もあれば、友人を思う優しさや勇敢さもある。将来、冒険者になることも夢じゃないだろうとゼットンは考えていた。
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