旅の終わりの森

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 数年後、ウォルターは本当に旅に出ることになる。父の道場でめきめきと剣術の腕を上げていた彼は、たまたま町を訪れた都市の冒険者ギルドに見出され、冒険者としての道を歩むことになったのだ。  その頃、彼らの国にはあちこちに冒険者ギルドがあり、それぞれ目的を持って活動をしていた。その中でも、ウォルターの所属していたのは特に優秀な冒険者が集まるギルドで、国からの任務を受けて冒険に出ることも少なくなかった。  ウォルターはギルドに所属して数年間はそうした任務を受けることはなかったが、経験を積んでいく中でしだいに頭角を現し、優秀な冒険者として名が知られるようになった。そして、とうとう国から重大な任務を与えられることとなった。  その任務とは、東の果ての山脈に生息するドラゴンの尾を手に入れること。この尾は粉末にして飲むと、どんな重病でもすぐによくなるという効果があった。国王は原因不明の病気にかかってしまった妃のために、どうにか手に入れたかったのだ。  しかし、任務の難易度は高かった。東のドラゴンといえば凶暴なことで知られており、優秀な狩人たちが数人がかりで捕まえようとしても、一頭でなぎ払ってしまえるくらいの力を持っていた。そのうえ、山脈に辿りつくまでにも様々な難所を通らなくてはならなかった。 「これは簡単な任務ではない。それでも行ってくれるのだな?」  使者に連れられ王宮を訪れたウォルターは、謁見の間で国王から直接そう尋ねられた。しかし、勇敢な彼はためらうことなく返事をした。 「はい、もちろんです。お妃様のため、なんとか鱗を持ち帰ってみせます」  それから、彼のほかに優秀な4人の仲間が集められた。そして、しばらくの準備期間を経て、彼らはドラゴン探しの旅へと出発した。
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