旅の終わりの森

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 ゼットンは、新聞でウォルターの旅立ちを知り、大いに喜んだ。 「あの少年がこんな任務を頼まれるほどになっていたとは…」  それからというもの、ゼットンは都市の冒険者ギルドを尋ねたり、旅先で話を聞いたりしながら、彼の旅路についての情報を集めるようになった。旅が進むにつれ、得られる情報は少なくなっていったが、それだけ遠くまで進んだ証と前向きに考えた。なんとか上手くいってほしい…。そう祈る気持ちで、良い知らせを待ち続けた。  ところが、彼らが出発して二年が経とうとしていた頃、不穏な噂が流れるようになる。 「あのドラゴン探しに出た冒険者たち、もう全員死んじまったらしいよ」 「俺も聞いたよ。南の国で盗賊団に襲撃されたとか…」 「いや、北の国で大熊に襲われたんだよ」  ゼットンはたまたま訪れた酒場でそんな会話を聞き、ぎょっとした。会話をしていた客たちに詳しく話を聞いてみると、他国を旅している冒険者づてに噂を聞いたのだという。  嘘だと信じたかったが、その後、新聞などでも彼ら旅が失敗したのではないかという情報が出回るようになった。遠い僻地での出来事だったこともあり、正確な情報は分からなかったが、東の山脈に入る手前の森の中で全滅したとの線が有力だった。  やがて、東の国の冒険者づてに、東の森の近くでウォルターのものらしき装備の一部が見つかったという情報が入ってきた。彼は何者かに襲われて身ぐるみを剥がされ、死亡したと見られているという。  国王もこれを重く受け止め、ドラゴン探しには新しく任命された冒険者たちが向かうことになった。彼らが注目を集めるほどにウォルターたちの情報は聞かれなくなり、忘れ去られていった。
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