旅の終わりの森

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 冒険者たちの話を聞いてからというもの、ゼットンは東の森について調べるようになった。しかし、自国や他国の歴史書をあたってみたものの、なぜか曖昧な情報ばかり。おまけに、それぞれの情報には整合性がなかった。 「南の国の冒険者イグニスは狼の群れに襲われ死亡。北の国の冒険者ソロウは大蛇に襲われ死亡…。おかしいぞ、狼の生息地は寒冷地域で、大蛇の生息地は熱帯地域のはずだ。これでは森の中に、真夏と真冬のような場所があることになってしまう」 「これも変だ。東の国のハーディは山賊の根城に迷い込み死亡。西の国のライリーは窃盗団のアジトで拘束され死亡…。同じ森の中にそんなにたくさんの組織の拠点があるものだろうか?」  調べれば調べるほどに、情報は不確かになっていき、ゼットンを悩ませるのだった。  一方、ウォルターの旅路にも腑に落ちないところがあった。これまでの活躍を見るに、彼はいつも大胆な方法よりも、確実にミッションを成功させる地道な方法を選ぶ傾向があった。それなのに、これほど危険な噂の立っている東の森を抜ける道をわざわざ選ぶとは。何か理由があるのではないかと勘繰らずにはいられなかった。 「もう、こうなったら自分の目で確かめるしかない」  ゼットンは東の森へ行ってみることに決めた。
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