旅の終わりの森

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 一見すると、ミレイユは若く物腰も柔らかく、頼りがいのある冒険者には見えなかったが、その実は豊富な経験と知識のある優秀な冒険者だった。  旅のルートは彼女が入念に下調べをして決め、時間はかかるものの危険が少なく確実に進めるルートが取られることになった。旅に必要な荷物も彼女が検討し、珍しい装備や備品だろうと、役立つものであれば必ず揃えた。道中身を守る護身術や道に迷ったときの対処法なども、逐一レクチャーしてくれた。  ゼットンは厚意に甘えつつも、不思議に思い彼女に尋ねた。 「なんでそこまでしてくれるんだい?」 「ウォルターさんに恩を感じているからです。まだ駆け出しだった頃、私は経験も実力もなくて、ギルドの年長者からは若い女というだけで悪く言われることもありました。でも、冒険者の詰所で私が馬鹿にされていたとき、たまたま町に来ていたウォルターさんが怒ってくれたんです。若いってことはこれから経験が積めるということだ、まして性別なんて関係ない、と。彼に会ったのはそのときだけでしたが、今でもその言葉が忘れられないんです」 「そんなことが…」  ゼットンは幼いウォルターが自分のために怒ってくれたことを思い出した。あのときと彼は変わっていなかったのだ。なんとか彼の手がかりを見つけてこよう。ゼットンはそう強く誓った。
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