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百鬼暮れなずむ
百には想い人がおった。
手代の三助という男じゃった。
何処の出かは知らぬが、丁稚奉公に寄越された男じゃというた。
力仕事の多い材木問屋にありがちな、むくつけき男衆に似合わぬじつにすんとした面立ちに、まだおぼこの百は片思いしておった。
「そろそろ家具屋の使いから三助さんが戻ってくる頃」
百は袂に手を入れて忍び寄る夜の寒さに備える。
いや、幽霊に寒さなぞ無いのじゃが、百はまだ十ばかり。物思う年頃なのじゃ。
幽霊に年を考慮する必要があるのかなど、ここでのツッコミは無粋という物じゃろう。大人の真似をして悦に入りたい乙女心に水を差すのは大人げないというものじゃ。
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