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「だけどすごいね、学君。小説で賞取ったんでしょ?」
「え?」
「ほら。あのウェブの」
「……え?」
「見たよ、小説コンクール。アレ学君でしょ? 『あの白い街で飲んだ透明なスープのことを―― シュトウマナブ』って」
なんだもう随分前の話じゃないか、と聞いた途端無性に気恥ずかしくなる。
ちっぽけなウェブ小説コンクールではじめて書いた小説が入賞枠の端っこの方で名前を小さく刻んだに過ぎない。
ハルカにいわれたものは俺にとって初めての作品だった。
書き方や作法だって知らないからとにかく好きな小説の書き方やフレーズを所々まねながらようやく書き上げたものだった。こんな短い文章ひとつ書き上げるのにひと月かかるなんて、と才能のなさに挫けた。誰でも良いから読んでくれ、とウェブ上にアップしてコンテストに応募した。
テキトーも良いところだった。エントリーしてみたけれど選ばれるなんて夢見るくらいしかしなかった。そんなモノ取って何が変わるものか、なんて言われるだろう。だけど、認めて欲しかった。
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