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そのころからこのことを知っていたらもしかして何か変わっていたのだろうか? もしかしたら、なんて思いを胸に尋ねる。だけどその先の事なんてやっぱりくだらない、もう夢じゃないか。もう迷っていても意味はないか、なんていつも通り砕けてみる。
「……素敵だった、か」
「どうしたの?」
「いや。他のやつは読んだ?」とハルカに尋ねた。
ハルカは「うん……」とたどたどしく答える。
ほらね、だろうね、と心の中でつぶやいた。正直俺の他の作品なんてまともに読めた代物じゃなかっただろう。俺はずっと学ばない。人のために何かなんて事よりいつも、こんな辛い自分を見て、とばかり。
あんな書き方を比喩なんて気取るほどエラい人間じゃない。
たまに呟いた近況報告にだってそれが現れていた。狂気が時に芸術へと昇華することはあるのだろう。しかし狂気をそのままぶつけたところで人の心には何ら響きはしない。結局ただのもの狂いにしか映らない。
「正直ね。難しかったんだ。描く世界とか、感性だったりとか……」なんて聞き飽きている。だからそう言われてしまう前に俺はハルカにはっきり言った。
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