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AIUEO
『ご覧頂きありがとうございます。こちら新品、送料無料。子供5歳、購入金額は九百万円……』
時代が変わり早速世間は10連休。年中不定休の俺にはそんなのあんまり関係ないやってさ。
フリマアプリに商品として出したのは5分前に誘拐した5歳の子供だ。当然規約違反だとかネットパトロールだとかに嗅ぎつけられたらそれまでだ。最近の取り締まりの厳しさで考えれば、こんなモン出品してみたところでせいぜい5分ばかりもてばいい。
「ねえおわった?」
「ああ」
「やっぱさ、そういうの。ちょくせつじいちゃんにデンワしたほうがはやくない?」
「だろうな」
「なんでこんなマヌケなコトするの」
「さあな」
「バカなの? まなばないの?」
「うるせえな。大体そもそもな。お前がじいちゃんの電話番号知らねえからだろ?」
「だけどさ、ボクをユウカイしたのアンタじゃん! それくらいしらべてたら!」
「うるせえなあ……」
「ぼくさあスマホでデンワかけたことないし。だいたいユーチューブしかつかったことないし」
「あー……めんどくせえ」
子供の堂々巡りにしかならない問いかけにドライな反応を返す。
「けいかくどーりやれよ。おとなってバカだなあ」
うるせえよ、子供のくせに、なんて思ったが確かに俺はバカだ。
どうして誘拐なんてしたか? そんなものに理由なんて無い。衝動的なものだった。
子供をさらったなんて別に計画していたわけじゃない。ただこのまま過ごしていても仕方ないなんて事がこれまでに鬱積していたのも事実だ。
時代が変わったからと俺が変わるわけじゃない。
失敗なんて目に見えている。最悪誘拐未遂容疑で逮捕だ。無様にSNSで晒され有象無象に知らぬうちに罵られることがありありと目に浮かぶ。
きっかけらしいことはたとえばオアシスさえ枯れた砂漠の中でさまよう最中にまるで通り雨みたいなシチュエーションで斉藤ハルカと再会したことぐらいだ。
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