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LAST DANCE
「どうしたの?」ぼーっとしてた俺にマナブが声をかける。
「やーめた」
俺がそう言うとマナブは、
「やめんの?」 なんて言ってつまんなそうにつぶやく。
「やーめた。やっぱさ、狂言誘拐なんて馬鹿馬鹿しい。それで金になればとか思ったけど俺にはやっぱ向いてないわ」
「ま、あんなんじゃね」
「うるせえよ」
「1おくだろうが1えんだろうが、1おくおくおくおくえんだろうが、てにいれるのムリだよ」
「なんだよ、おくおくおくおくって……ま、そうだな。いくら積もうがなあ――」
「なに?」
「子供の頃の俺なんかどうせ誰も迎えに来ないだろうけどな」
遠くから小さな人影が見える。じっとこちらを見ている。多分マナブの母親なんだろう。遠くからマナブのことを信じているのだろう、じっと見守っている。
「あ、ママだー」
マナブは母親の姿を見つけると一目散にそこへ走って行く。
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