LAST DANCE

1/5
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ

LAST DANCE

「どうしたの?」ぼーっとしてた俺にマナブが声をかける。 「やーめた」  俺がそう言うとマナブは、 「やめんの?」 なんて言ってつまんなそうにつぶやく。 「やーめた。やっぱさ、狂言誘拐なんて馬鹿馬鹿しい。それで金になればとか思ったけど俺にはやっぱ向いてないわ」 「ま、あんなんじゃね」 「うるせえよ」 「1おくだろうが1えんだろうが、1おくおくおくおくえんだろうが、てにいれるのムリだよ」 「なんだよ、おくおくおくおくって……ま、そうだな。いくら積もうがなあ――」 「なに?」 「子供の頃の俺なんかどうせ誰も迎えに来ないだろうけどな」  遠くから小さな人影が見える。じっとこちらを見ている。多分マナブの母親なんだろう。遠くからマナブのことを信じているのだろう、じっと見守っている。 「あ、ママだー」  マナブは母親の姿を見つけると一目散にそこへ走って行く。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!