Trace

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Trace

「学君?」 「斉藤?」 「うそ! ひさしぶり! まだ実家にいるの? 今仕事何してるの? こっちにはいつから?」 「あ、いや、まあ……」  斉藤ハルカと再会したのは、中学卒業以来だった。  ひさしぶりなんてありきたりな挨拶をかわし相変わらずおしゃべりでかしましいハルカから1年前にこの町に戻ってきたことを聞く。 「ごめんね。私ばかり聞いちゃって。面食らうよね、やっぱ」 「いや、いいけど……」 「私はつい最近戻ってきてさ。両親が帰って来いって言うから、ちょうどいいかなって……知ってる顔なんて随分減っていたからこうして会えたのが不思議なくらいで。こっちにいたなんて思わなかったし……」なんて囃すように話す。    俺は、ああそう、なんて無愛想につぶやいてしまうだけ。どうせ通りすがりに何度か見かけても気づきもしやしなかっただろう。それくらい俺はどうでもいい過ごし方をしていた。
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