金曜午後六時ハチ公、命捨てるかパンプス買う散歩

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ハチ公前には似たようなシリーズの男だけでも何人もいて、スマートウォッチのカウントが進む。 アオガエルに背を預けると、ハチ公像の前、私と年が近そうなカップルに目がいった。 男が、一年前に別れた元カレに似てる。 ふんわりした猫っ毛で、いつも潤んでるみたいな大きな瞳、鼻が細くツンと尖ってて、リップをひいたみたいな血色の良い唇に、女の子みたいな真っ白くきめの細かい肌。 そして徹底的に中身がない男。 かわいいって言われたいだけ、セックスしたいだけの男。 心がなく欲のセンサーだけがある、ある意味昆虫みたいな生き物。 男が女の子に笑いかけると、照れたように女の子の顔がほころぶ。 男は子犬みたいな笑顔をつくれば評価されることを知りつくしているように見える。感情なんてそこには何もないのかもしれない。 むしろ笑顔とは真逆のことを考えてるのかもしれない。 『この女ちょろいな』だとか。 『ホテル代浮かせたいな』だとか。 『元カノよりこいつ肌汚いな』だとか。
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