金曜午後六時ハチ公、命捨てるかパンプス買う散歩

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ハチ公側、ツタヤ側、それぞれの人の塊が交差点の中央でぶつかる。 スマートウォッチの振動が止まらない。 顔と顔の爆発から抜け、少し空が広くなって、パーソナルスペースができた。 斜め上から声がふってきた。 「マスクしてても顔の小ささバレバレ。顔隠してちゃもったいないよキミ」 二重線の幅が不自然に広い大きな目が私を見おろしている。 ひょろっとした二十代半ばくらいの男だ。 鼻が高くアゴの尖った彫りが深い顔。 整っているけど、目の空虚さのせいか、内面の問題か、いやらしさが漂う。 綺麗にそろえてるヒゲもナルシスト感がすごい。 初見でスマートウォッチが振動した。 ――死へのご協力ありがとう。 「ねえ、なんか返事してよ」 この男に、最大の拒否、最大の否定をとどけたい。 最も効果的な方法は完全なる無視だ。 お前など道端の石ころほどの価値もない。 不快じゃないだけ石ころの勝利だ。 視界に入るなゴミくず。 「なんだよ冷てぇな。待てって」 視野に突然手が伸びてくる。 次の瞬間、両耳の上が擦れる感覚があって、視界が開けた。 「おお、やっぱ美少女」
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