絵夢子との出会い

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絵夢子との出会い

 圭太が一応、部活動に励んでいた頃だから高校生になって間もない日永になった或る日の夕暮れ前の事だった。東風を背に受けながら部員達と校庭をランニングしていた圭太は、テニスコートの前に差し掛かった所で打球音と共に、「あん!」という女の喘ぎ声とも取れるセクシーな唸り声が刺激的に耳に飛び込んで来た。で、思わず声のする方を見ると、脚線美を露わにした純白のテニスルックの女子生徒の後ろ姿が亦しても刺激的に目に飛び込んで来て、「うわあ、何て綺麗な脚なんだろう・・・」と深く感じ入り、その美脚に強く惹き付けられ、何とかして顔も見てみたいと思った。  圭太は高校時代、異性に対して斯様なポジティブな気持ちになったのは、この女子生徒に対してだけであった。名を和泉絵夢子と言って圭太とは一年先輩で二年生なのであったが、美しさに於いて他を寄せ付けない絵夢子の脚が圭太の美意識の高い好尚にぴったり当て嵌まったのである。それ故、エロースに我がハートを黄金の矢で射られたのである。その上、絵夢子と面識が無く自分の事を知られていないと認識する事で客体としての自己を気遣う必要がないからポジティブになれたのである。  絵夢子の脚に恋して以来、圭太は部活動中にテニスコートの前を通り掛かる機会が有ると必ず絵夢子を探したものだが、遠目にしか見れず、今一つどんな顔か、確認出来ないので益々絵夢子の顔をはっきり見てみたい気が募るのだった。だからと言ってどうする事も出来ず荏苒と月日は流れて行き、あの悪夢の国語の授業…六月中旬のじめじめした日のことだった。先生がこんな指示を出したのが発端となって起こった。 「183ページを開いて!今日はこのページの三行目から皆に順に読んで貰うが、先生がはい!と言ったら読むのを止めて、読み終えた者は友達を指名して次を読ませるという形で行く。まず、良原!読んでみろ!」  この指示を受けた刹那、圭太は頭の中が真っ白になった。何しろ彼には友達と呼べる者が一人もいなかった。けれども、先生の指示は絶対だから反射的に起立すると、兎に角、指示されるが儘、読んだ。そして先生が、「はい!」と言ったので読むのを止めると、教室内は水を打ったように森閑となった。当然、圭太はまごついて俯いてしまうと、先生が透かさず、「どうした!指名しろ!」と催促する。と、教室のあちらこちらからクスクスと笑い声が起き始めた。焦燥感に駆られた圭太は、止むを得ず、中学二年の時に同じクラスになって一回だけではあるが、家に招待してくれた生徒がいたから彼を指名すると、「お前なんかに呼ばれる筋合いはねえ!」とほざかれ、その瞬間、教室全体からどっと笑いが起こった。  この授業をしていた教師は、この様な状況になる事を端から期待していたのである。この教師は圭太に荊棘を抱いていて圭太に友達がいない事を知っていた上で敢えて圭太を指名して圭太を憂き目に遭わせる陥穽に嵌めたのである。哀れにも圭太は爆笑の渦と化した教室の中で物凄い虚無感と孤独感と疎外感に襲われていた。仏法によると孤独地獄は他の地獄と違って山間荒廣野樹下空中、何処へでも忽然として現れるのだそうだが、だとすれば、正にこの時、圭太はこの境界に在り孤独地獄へ堕ちたのだ。  圭太はその極めて落ち込んだ心の中で瞋恚の情が勃然として沸き起こり、教師の悪意を確かめないではいられなくなり、俯いた顔を思い切って上げ、勢い教師をじろりと睥睨した。すると眼鏡の奥で溝のように濁った眼を鈍く光らせながら氷のように冷たくほくそ笑む教師の邪悪な表情を見て取り戦慄した。圭太はこの時、教師の心に潜在する悪魔その物を見たのだ。そして思った。やっぱり奴は楽しんでいやがった。確信犯だったんだと。  教師は圭太の突き刺すような視線を感じると、「皆!静かにしろ!良原座って!」とやっと指示して圭太を座らせた後、騒めいた教室内を静められない儘、「しょうがない。えーと田中!読んでみろ!」と他の生徒を指名して授業を再開した…を体験したのちには、人間嫌いが深刻化して部活動に於ける人間関係が愈々以て嫌になり、部活を自ら中断して途中で抜け出したり、端からさぼったりする内、自棄を起こしてテニスコートが三面あるグランド周りに張り巡らされたネットフェンス越しに部活動中の絵夢子を覗くようになった。  実は圭太の通っていた高校は丘の上にあり、テニスコートが三面あるグランド周りは緩い傾斜の崖になっていて斜面に芝が張ってあったので圭太はまず崖の裾の木陰で学生服からジャージに着替え、虫除けスプレーを掛けてから疎らに生えている木々の間を縫って芝を掴みながら攀じ登ってゆき、ネットフェンスの下まで来ると芝の上に腹ばいになり、ネットフェンスの裾から芝の茂みに紛れながら頭だけ出して覗いていたのである。勿論、見つかったら不味いので、ずっと頭を出していた訳では無く、少し見ては引っ込み少し見ては引っ込みを繰り返して覗いていた。故に圭太は仮にテニスコートから見た場合、モグラ叩きのモグラみたいになっていた。偶にフェンスに当たって跳ね返ったボールを取りにテニス部員が自分の近くまで来ると、見つからないように顔まで芝の上にぴたっと押し付けないといけなくなるので、そんな時、圭太は壁に貼り付くスパイダーマンみたいになっていた。時には双眼鏡で覗く事も有ったので、そんな時、圭太は敵陣営を偵察するソルジャーみたいになっていた。全く自棄糞の為せる業で圭太はそんなスリリングな危険を冒してまで覗いていた訳である。  圭太はそうして覗いていると、ベンチに座って休んでいる絵夢子と目が合ったと思う瞬間が偶に有った。その後、一旦、隠した頭を恐る恐る出して覗いてみると、必ず絵夢子はそっぽを向いているのであった。だから圭太は、ばれてないと思って、その後も覗き見を続ける事が出来たのだが、刺激的なことにそういう時に限って絵夢子は暑そうに手で顔を煽ってからテニスウェアの胸元のボタンを3つ全部外して胸の谷間を露にするのだ。ブラジャーで寄せているとは言え、谷間がくっきり出来る位だから胸は相当大きい訳で、それを見たからには男なら誰しもエキサイトしない筈がなく、絵夢子が圭太の手前側のコートでプレーする時には割と近い距離で絵夢子の美脚や時にはパンティまで拝む事が出来たので、そんな時、圭太は更にエキサイトして狂喜したものだった。圭太はそうこうして汗だくになりながら覗き見する内に部員との遣り取りから絵夢子が一年生では無く上級生である事が分かった。  が、絵夢子と依然として接触する事が出来ないから彼女について分かった事と言えば、それ位なもので何の進展も無い儘、碌々として日々を送り夏休みを経て二学期に入って間もない夜長になった或る日の夕暮れ時、圭太は二日ぶりに部活に出たものの部員とランニング中、脱落し、独り逸れ、それを潮に水飲み場へ行き、まずは水分補給した。それから美しい夕陽にも目もくれず一途に絵夢子を一目見ようとテニスコートへ向かって丸で震度3位の地震で揺れる地面を歩く様にふらふらと歩いていると、背後から誰かが走って来る足音が聞こえた。で、あっ!部員の奴が引き戻しに来やがったなと思って振り向いた。すると図らずもポニーテールとプリーツスカートを靡かせながらテニスルックの女子生徒がこっちへ駆けて来るのが目に飛び込んで来て急激に胸を驚きとときめきで波立たせた。  圭太は振り向き様、目を疑るも、あの人だ!と分かったのである。そして、ずっと憧れに憧れていたテニスルックの絵夢子が夕陽を正面に浴びながら目の前にやって来た日には、初めて間近で見た感動も手伝って光彩陸離たる聖母マリアが目の前に降臨したかの様な天地が引っ繰り返る程の衝撃を受け、「うわー!すげー!細~い!超ナイス!超美しい!顔も、ちょ~いけてる~!」と思い、見蕩れながら其の場に釘付けになってしまった。 「あー!あなたってフェンスの裏でいつも覗き見してた人でしょう!」  圭太は絵夢子の発した可愛いらしい声が空谷の跫音となって寂しさ、悲しさ、虚しさに喘いでいた心に隈なく鳴り響き渡って忽ちの内に彼女の虜となり、逃げ出すどころか我知らず彼女と正対して放心した儘、「あっ、そうです。」とあっさり口を割った。  その瞬間、「アハハハ!」と絵夢子は辺りを蔽っていた暮陰を吹き飛ばすかのような陽気な声を上げて大笑いして、「やっぱり、モグラさんね、髪型で分かっちゃった。」 「えっ、モグラさん?・・・」と圭太は独り言のように呟き、僕の頭ってモグラに見えるのかなあ?と腑に落ちないものを感じつつモグラの頭を想像する。 「私ね、あなたが二学期早々昨日も一昨日もモグラさんになって覗き見してる事に気づいてたのよ!」 「は、はあ・・・」と圭太は答えつつ、すっかりばれてると思ったにも拘らず逃げ出す気にはとてもなれない。 「それで、私、さっきね、下着着替えて部室棟から出てみたら偶々あなたが歩いてるのに気づいて、あっ、モグラさんだ!って思って、ここへ猛ダッシュで駆けて来ちゃったの。」 「あっ、そ、そうだったんですか。と、と言う事は、つまり、そのー、僕の事をさん付けで呼ぶ位だから覗き見常習犯としてこれから皆の所へしょっぴくって訳ではないんですね。」 「アハハハ!しょっぴくって私一人であなたを無理矢理、連れて行ける筈が無いじゃな~い。どうやって連れて行けって言うの?それとも私がそんな事が出来る怪力女に見えて?」 「い、いえ、そんな風には絶対、見えないです。」 「ふふふ、なのに私がしょっぴくかどうか、確かめようとするなんて、よっぽど心配なのね。」  この時点で圭太は絵夢子のフレンドリーな気色にほとんど心配する気持ちは無くなっていたが、「は、はい。」と返事をする。 「ふふふ、心配しなくても良いよ。だって私、君を吊し上げにしようなんて気は一切ないから。今までだって君がフェンスの裏で覗いてる事に気づいても誰にも言わなかったのよ。」 「あっ、そ、そうだったんですか。」 「そうよ。それにね、男子生徒の視線を意識しながら部活をしてるのは私位なものだから君に気づいてるのは多分、私だけよ。だから安心して。」と絵夢子は言いしな可愛らしく首を傾げる。 「あっ、はあ・・・」と圭太は返事をしつつ、それはそうにしても・・・と納得いく半面、何故、覗き見を内緒にしてくれるのか?疑問に思う。 「勿論、これからも内緒にしておいてあげるから安心してね。」と絵夢子は言いしな念を押すように首を傾げる。 「あっ、はあ・・・」と圭太は判で押したように返事をしつつ、何でだろうと思ったので理由を聞こうと思っていると、「但し、私、ここで注意しておくわ。」と絵夢子は言いながらほっそりした腕で腕組みをして、「君、いけないよ、覗き見は。」と言うなり夕陽をもろに浴びた頬を赤いリンゴのように張りを持たせつつフルーティーに膨らませた。  逆に夕陽を背に浴びていた圭太は、影が出来ていた色白の顔を絵夢子の仕草に魅せられるやら絵夢子の言葉に恥じ入るやらで赤く染め、「あっ、あの、す、すいません。」と謝って頭を深々と下げ、顔を上げた。その微妙な色合いを帯びた顔を、「而も部活をさぼって・・・」と絵夢子が言いながら凝視した後、「一年生の段階でそんな事でどうするの!」と言って来たものだから、「えっ!」と圭太は思わず声を上げ、何で僕が一年生だと分かったんだろう?ひょっとして自分の事を知られてしまっているのではないかとやきもきして、「あっ、あの、僕が一年生って事、何で知ってるんですか?」 「だって君、最初から敬語で喋ってるじゃな~い。」  圭太は、あっ、そっかと気づき、「あっ、そ、そうですよねえ。」と言いつつ知られていないと安堵する。 「君こそ、何で最初から私を上級生だと思って話してたの?」 「あっ、あの、覗いてる内に分かったんです。」 「そんなに私の事を観察してたのね。」と絵夢子はズバリと指摘し、にやりとする。 「あっ、いや・・・」と圭太は返事に窮して恥じらい、絵夢子を直視出来なくなる。 「よっぽど、部活をさぼってたのね。」と絵夢子はチクリと刺し、亦、にやりとする。 「あっ、はあ・・・」と圭太は返事をしながら、すっかり形無しの態になる。 「怠慢ね。」と絵夢子は一言で言い切り、亦もにやりとする。 「あっ、す、すいません。」と圭太は謝り、恥じ入って、なよなよと頭を下げる。 「ほんとにいけない子ね。」と絵夢子はばっさりと切り捨て、果然、にやりとする。 「は、はあ・・・」と圭太は返事をしながら汗顔の至りとなり真っ赤な顔を恥ずかしそうに俯かせる。  絵夢子はその隙に腕組みを解くなり圭太の手をさっと取り、「ちょっと来て。」と言ってテニスコートから死角になる校舎の物陰に圭太を連れ込んで行き、手を離すと、再び腕組みをして自信たっぷりに、「何で私を覗いてたの?」  圭太は絵夢子がさっきより接近したので頗る恥ずかしくなった上に彼女の質問に答える事にも頗る恥ずかしくなり、今まで以上に彼女を直視出来なくなって、「い、いや、その・・・」と答えるのに甚だ窮した。 絵夢子は対照的に今まで通り圭太の顔をしっかりと見た儘、「言いなさいったら。」と迫って来る。 「え、えーと・・・」と圭太が相変わらず恥ずかしがりながら答えるのに窮し、尻足を踏むと、絵夢子は足元を見て言わそうと、「言わないなら君が覗いてた事、皆に言い触らすわよ!」と更に迫って来る。 「えっ!そ、それだけは!」と言って圭太が思わず両掌を絵夢子に向けて前進させないようにしても絵夢子は気迫を込めて、「だったら言いなさい!」と更に迫って来る。  圭太は絵夢子の気迫に押され、両手を引っ込めてから、「は、はい。えーと、あ、あなたが、み、み、魅力的だからです。」と遂に白状した。 すると絵夢子は夕陰の中で黒曜石のような瞳を煌めかせ、「ふふふ、そう・・・」と如何にも満足そうに笑った。それから矢張り自信たっぷりに、「じゃあ、私だけを覗いてたのね?」と聞くと、圭太が先程、披歴したお陰ですっかり素直になり、すんなりと、「あっ、ああ、そうです。」と続け様に白状したので妖しく光る美しい瞳を煌めかせ続け、ふふふと更に満足そうに笑い、納得して、「やっぱりね。」 「あっ、ああ、やっぱりですか?」 「だって、いつもモグラ君の視線を感じちゃうんだも~ん。」  圭太は態と感心した風を装って、「そ、それは凄い能力ですね。」 「アハハハ!」と絵夢子は夕陰の中で皓歯を光らせて哄笑した。「能力なんて大袈裟なもんじゃないわ。私、男子から注目の的だからそう感じちゃうの。」  圭太は相変わらず絵夢子を直視出来なかったものの落ち着かないまなこで見ながら、こんな事、豪語出来るなんて大したナルシストだ、でも無理はない、実際、ナイスだし・・・と思い、「あっ、そ、そうでしょうね。あの、ところで何で僕がモグラ君なんですか?」 「だって君がネットフェンスの下から、ひょこひょこって頭だけ出すもんだからモグラ叩きのモグラに見えたの。」 「あっ、成程・・・」圭太は確かにと思い、得心が行く。 「それでね、何で私が今までモグラ君になってる君を見つけても皆に言い触らさなかったか、分かる?」 「い、いえ・・・」 「知りたい?」 「はっ、はい。」 「じゃあねえ・・・」と絵夢子は言いながら腕組みを解いて顎に右手を当て左手を右肘に添え少し首を傾げたポーズを取って暫し考えてから、「君はお弁当持参組?」 「はっ、はい。」 「じゃあ、お弁当食べてからで良いから」と絵夢子は言うなりポーズを解いてグランドの東端に建つ部室棟を右手で指差した。「明日の昼休みにあの部室連の裏に来れる?」 圭太は部室棟を眺めながら色めき立ち、「えっ!あっ、はい!」と頗る嬉しそうに答えた。だから気を良くした絵夢子は、玲瓏たる二つの瞳を夕陰の中で一際きらりと輝かせ、「きっとよ。」と言って、「はっ、はい!」と圭太のいつになく意気軒昂な返事を聞いてから、「じゃあ、私、戻らないといけないから!」と言うや、テニスコートの方へ急いで駆けて行った。  圭太は絵夢子が去った後、一体、これはどういう事なのだろう?と訳が分からなくなったが、「犬も歩けば棒に当たるか、ハハハ!」と笑ってからときめき続け、「袖振り合うも他生の縁と言うしな、この出会いを大切なものにしなくては・・・」と思いを新たにした。で、絵夢子が亦、見たくなって校舎の物陰から出てテニスコートの方へ視線を向け、彼女を探してみると、彼女が早くもテニスコートに戻ってコーチの繰り出す打球を打ち返そうと順番待ちしているのが分かった。そして赤々と燃え盛る夕陽をバックに影絵の様になった絵夢子を暫し一心に眺めてから、「秋の日は釣瓶落とし。もう眺めていてもしょうがない。」と切り上げ、足元の明るい内に部室に向かい、誰にも見つからない儘、忍び入り、着替え、無事、帰路に就いた。  圭太は蒼茫と暮れ行く中、「何であの人は今までモグラになってる僕を見つけても言い触らさなかったのだろう?」と考え出した。「僕の顔を気に入ったから?そうだ!そうだ!だから僕を贔屓にして擁護してくれたんだ!いや、あんな遠目から見て僕の顔が良いかどうか分かる筈が無い。だよなあ、ハハハ!してみると・・・」と更に考えた。「僕を哀れに思ったから?いや、モグラになってる僕を見ただけで僕の内情をそこまで察しられる訳が無い。第一、有史以来、女が覗き見男を気遣った例は多分ない筈だ。それに、そんな理由で女が男に会う約束をする訳が無い。してみると・・・」と更に考え、赫々たる夕陽を浴びて五彩の虹のような光を放つ鰯雲の群れを眺めながら五里霧中になった末、「皆目わからん。」とギブアップするも自分の事を言い触らさなかった理由を言う為に絵夢子が自分に会う約束をした事に着目すると、「女から初対面の男に会う約束をするというのは只事じゃない。だから僕の事を言い触らさなかった理由というのも只事じゃない筈だ。きっと僕にとって色好い理由に決まってる。そうでなくても憧れの人と待ち合わせの約束が出来たのだ!」と期待が頭上の夜空を通り越して遥か彼方に輝く大宇宙のように広がって行った。
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