一日目

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一日目

十五時二十分着の飛行機は、予定通り新千歳空港に到着した。 快速エアポートに乗って札幌駅を経由し、スーツケースを引きずって目的地に向かう。 四月の北海道の風は冷たくて、立て続けにくしゃみが出た。 地図を片手に少し歩くと、チョコレート色の大きなホテルが、薄曇りの空に高くそびえている。 私は「よしっ」と自分に声をかけ、入り口の門をくぐった。 「短期OK! ホテルでのリゾートバイト! 住込み可」 そんな求人広告につられて、私は北海道に来たのだった。 すでに東京の派遣会社で、簡単な面接はすませてある。 それでも小心者の私は、おなかが痛くなるくらいに緊張した。 「はじめまして。今日からアルバイトでお世話になります、亀田繭子といいます」 できるだけハキハキと、フロントの女性にあいさつをする。 「お待ちしておりました。今、ジュリアン呼んで来ますね」 彼女はほほえむと、バックルームに引っ込んだ。 入れ替わりのように、若い男の人が出てきて言う。 「バイトリーダーの佐藤寿里案(さとうじゅりあん)です。どうぞこちらへ」 ホテルのレストランの制服なのだろう、 白いシャツに黒いベスト、黒い蝶ネクタイをつけている。 整った顔立ちだが、ニコリともせず、冷たそうに見える。 彼のあとについて、客室やレストランを見てまわった。 ホテルはどこもかしこもピカピカと立派で、こんなところでちゃんと働けるのだろうかと不安になる。
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