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目を覚ますと、見慣れた部屋があった。
また窓際に干されているらしく、後ろに日の光が当たっている。
以前よりはしっかり洗濯したらしいな。
臭いがそれほどでもないし、ちゃんと乾いている。
「あ、目が覚めた?」
アストレアが近付き、俺に話し掛ける。
この様子じゃあ、またパンツに戻ったか。
まったく…勘弁してくれよ。
…いや、待て。もしかしたらだが…。
『…お前、パンツに目が覚めたとかないだろ』
…喋れた。
前よりは身体の扱いになれたようだ。
だが、エネルギーは空っぽだ。
吸収した分を全て放出しちまったらしい。
「ホントに喋ってる…あれは夢じゃなかったんだ…」
『夢なワケあるか。それよりあの後どうなった?』
「どうなったって…大変だったわよ。地盤沈下は起きるし、土地は荒れ果てて草一本生えなくなるし…」
そりゃそうだ。
こちとら星ごと滅ぼすつもりでやったからな。
「でも見て!オークの討伐には成功したからって勲章もらったよ!討伐隊長に出世もしたわ!」
アストレアがお粗末な勲章を見せる。
よくあの有り様で貰えたな。塵も残さなかった筈なのに。
「あなたのお陰よ!幸運を呼ぶパンツね!」
『…そりゃ良かったなぁ』
俺はちっとも良くない。
…恐らくだが、パンツになったせいで吸収出来るキャパシティが減っていたんだろう。
限界越えて吸収したかは破裂した…食あたりだな。
今の俺には星を丸ごと喰える程の力はない。
パンツに星は大きすぎるってわけだ。
「でね、今度は遠征任務を任されて、西で暴れてるドラゴンを退治してこいって!」
あー…厄介払いか。
無理もねぇよな、あんだけのことやらかしたと思われてるんだからよ。
どっか別の所に追っ払って、あわよくばくたばって欲しいって魂胆が見え見えだ。
だが、待てよ。これは好都合かもしれない。
「ねぇ、また協力してくれない?ドラゴンって物凄く狂暴なんだって。わたし一人だとちょっと…」
『ああ、いいぜ。協力してやる』
「ホントに!?」
こいつに付いていけば、またエネルギーにありつける。
少しづつエネルギーを溜めて、キャパシティを増やす。
そうしていけば、いつか力を取り戻せるかもしれない。
それまでは辛抱だ。
もう一度星を滅ぼせる、その日まで。
「ありがとう!それじゃ早速…!」
アストレアは俺を持ち上げると、顔面に被った。
「行くわよ相棒!全ては我らの栄光の為に!!」
『…パンツは下に履け』
この時、星喰いは気付かなかった。
自分のキャパシティが減ったのではなく、エネルギーの吸収は出来ても溜めておけない身体になっていたことに。
その後、各地で『魔物退治の女騎士』の伝説が伝えられるようになった。
彼女はあらゆる土地を流れて多くの人々を救ったが、何故か顔にパンツを被っていた、という。
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