残念女騎士と星喰いパンツ

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残念女騎士と星喰いパンツ

『星喰い』  その生物はそう呼ばれていた。  自分から名乗った訳ではない。本当の名前など、その生物にはなかった。 『星喰い』という名前も、その生物を恐れた者達に付けられた字である。  その名が示す通り『星喰い』は星を喰う。  飛来した惑星とその住人を吸収し、自らのエネルギーに変える。  しかし、『星喰い』は変わった習性を持っており、いきなり星を喰ったりはしない。  まず標的となる惑星に飛来し、その惑星の生物に擬態し、その惑星の倫理、道徳、習慣などを学び知識を得る。  その期間は数年から数十年に及び、十分に惑星の知識を得てから行動を開始する。  学ぶことがないと判断した場合はそのままエネルギーへ変えることもあったが、ほぼこのプロセスから外れたことはなかった。  この習性は、『星喰い』唯一の娯楽だった。  ただ滅ぼすだけなら簡単だ。だが、それでは面白くない。  長い時間をかけて築いてきた文明を知り、それを理解した上で滅ぼす。  ある時は極限まで発達した文明を逆利用して滅ぼしーーー。  またある時は星の生物の心理を掌握し互いに争わせて滅ぼした。  滅ぼす瞬間に感じる生物達の絶望、怒り、悲しみ…その全てが『星喰い』の喜びだった。  だが、『星喰い』の跳梁は今まさに終わろうとしていた。  ある星で『星喰い』は手痛い反撃を受けた挙げ句に、エネルギーを得ることも出来ないまま宇宙へ放逐されたのだ。 『星喰い』は今や不定形生物(アメーバ)となり、存在すら困難な程に衰弱していた。  何故こんなことになったのか。  考えても解らなかった。  いつもと同じように入念に下準備を行った。  その星の生物たちも特別に強い訳ではなかった。  取るに足らない下等生物…だった筈なのに。  だが、全ては後の祭りだった。  既に崩壊は取り返しのつかない所まで進み、死は目前に迫っている。  生まれて初めての怒りに身を震わせながら、『星喰い』の意識は闇に飲まれていった…。  
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