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結果は案の定だった。
「うわっ…!?」
勇み足で集落に突っ込んで行ったアストレアだったが、一発で見つかり、一撃で剣をぶっ壊された。
当たり前だ。
見たところオークって奴は厚い脂肪と筋繊維を全身に纏ってやがる。
おまけにこの手の原始生命体は痛みに対して鈍感なことが多く、鉄の剣で斬られたぐらいじゃ怯みやしない。
おまけに金がねーのか知らんが、最低限の鎧とスカートで敵地に行くバカがどこにいる。
…どこまでも残念な奴だなぁ、オイ。
「くっ…殺せ…!」
何言ってんだバカ。
言葉なんざ通じるわけねーだろ。
オークが涎を垂らしながら近付く。
加えて、騒ぎを聞き付けたのか他の個体まで群がって来やがった。
「ひぃ…!?」
あー…こいつもおしまいか。
短い付き合いだったな。
精々オークどもに愛してもらえ。んで、孕み袋にでもなってさっさと死ね。
……そこまで考えて、俺は気付いた。
こいつがヤられたら、俺はどうなる?
パンツなんざ剥ぎ取られるよな。邪魔だろうし。
いや、最悪破られるんじゃないか?
破られたらどうなる…?もう一度死ぬのか?
俺が?破られて?
オークの手が俺に近付く。
…ふざけんな。
『ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
それは予期せぬ出来事だった。
俺の前面には小さなリボンが付いている。
表裏の区別以外に意味がなかったはずだが、この時から変わった。
リボンの部分が伸び、触手になってオークへ突き刺さる。
俺の身体にエネルギーが送られるのと同時に、オークの身体は骨も残さず消滅した。
「えっ…な、なに…!?」
『フ…フハハ…フハハハハハハハハハハハハハハッ!!』
俺は笑った。
この感触、身体に満ちるエネルギー。
身体も動く。声も出る。
戻った…遂に戻ってきたぁ!
「な、なんだ…!?何が起きて…!?」
『オイ、お前!』
俺はアストレアの足から抜け、呆然とする奴の目の前に浮かび上がった。
「ひぃ!?わ、わたしのパンツが!?」
『お前死にたくないよな?死にたくないなら助けてやる。幾つか条件があるがなぁ』
「な、なんだ…?」
『まずパンツは毎日洗え!生乾きで履くな!シワは伸ばして、ちゃんとたたんでからしまえ!後は消臭とシミ取り!洗うときも力任せじゃあなく、大切に扱え!』
「わ…わかった…」
よーし…!
待て、なんかもっと言いたかったことがあるような気がする。
…まあ、いいか。
今はこの場のことだけを考えよう。
『オイ、お前俺を被れ』
「はぁ!?」
『顔に被れつってんだ!早くしろ!』
ビクつきながらアストレアが顔にパンツを被る。
「臭っ…なにこれ…」
『てめえの臭いだバカ野郎』
俺は触手を伸ばし、片っ端からオークを吸収した。
連中知能が少ないのか、何人やられようが構わず突っ込んで来やがる。
吸収する度に俺の身体は形を変え、アストレアの全身に広がっていった。
布からアメーバへ。
アメーバから強固な生体装甲へ。
アストレアの全身は赤黒い鎧に包まれていた。
『中々のエネルギーだったが、この程度か…それでもまぁ、マシか』
「あわわわ…!?」
軽く見積もってフルパワーの2%。
だが、こんな下等生物どもには十分過ぎる。
『最後の仕上げだ!』
俺は触手を展開し、地表へ突き刺した。
この土地に生きる全ての命が俺の中に流れ込んでくる。
草木が枯れ、大地が砕け、立っていたオークどもが全て塵になって消えて行く。
『フハハハハハハ!このままこの星ごと滅ぼしてやる!下等生物ども、感謝しながら絶滅しろぉ!俺のエネルギーになれることになぁ!!』
…そこまで言って、俺の意識はプッツリ途切れた。
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