2・吹奏楽部

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 腕を組んでモデルのように立ち、もの凄く私を見てる気がする。  せ、制服が珍しいのかな……?  紅茶のキャンディーみたいな色艶の綺麗に巻かれた髪にカラーコンタクト、当然メイクもバッチリ。  それに私にとっては罰ゲームレベルの大胆なオフショルダーとミニスカートのコーデは目のやり場に困ってしまう。  確かこの女子もフルート吹いてたよね。 「部長の加藤(かとう)瑠璃奈(るりな)よ」  ぶ、部長さん!  私は立ち上がり間髪入れずに挨拶する。 「よ、よろしくお願いします」  堂々とした加藤部長のオーラに圧倒されて声が尻すぼみになったところに大きな声が飛んで来た。 「はぁ? うちも満席なんですけど。新しく覚えるんならクラリネットでよくない? どうせ吹くだけなんだから簡単でしょ」 「その言い方いつもイラっとするわ。やめてくんない? そういえばオーボエいたらな~って先生言ってましたよね?」  トロンボーンの人もクラリネットの人も笑ってる。  満面の笑みで言い合ってる。  楽器による対立的なものってやっぱり吹奏楽部あるあるなんだね。  初めての感覚じゃないけど怖いよ! 「うちならいつでも大歓迎ですよ! ね、野村先輩」  緊迫した空気を和らげるちょっと高めの能天気な男子の声。  その主は木琴の一種、マリンバを片付けていた。 「おう! 可愛い女の子大歓迎!」  きっとパーカッションのリーダーであろう野村先輩と呼ばれた男子は、厳ついガタイに似合わず愛嬌のある顔でヒラヒラと私に向かって手を振る。  ツンツンとした短髪に下がった眉毛が印象的。  マリンバ君もニコッと笑って一緒に手を振ってくれた。  きっと普通のことなんだろうけど男子ってだけでやっぱりドキドキしちゃう。  私はフルフルと頭を振って気持ちを落ち着かせる。  打楽器全般を担うパーカッションはやっぱりどこも人気がないのかな。  この男子二人に女子が一人の三人しかいないみたい。  三年生がいなくなったらピンチだよね。 「瑠璃奈、行くよ」  フルートを演奏してた他の二人に呼ばれて部長は音楽室を出て行ってしまった。  まだ片付けが終わってないのに。 「レギュラーの保証が出来るのはパーカッションだけだな。フルートは三年がいなくて二年が二人と一年が一人なんだよ。自前でオーボエ用意できるんなら明日からレギュラーだけどな」  結構好き勝手言ってくれますね、飯野先生。  そんなヒョイっと楽器買えるほど裕福じゃないんですよ。  パン! と自分の両腿を叩いて立ち上がった飯野先生はまた考えといてくれ、そう言って話を締めた。  帰っていいよ、とジェスチャーでアピールしてくれたけど片付けが終わってないことが気になって帰れない。  飯野先生もいなくなり一人ポツンとしてしまう。  ど、どうしよう。  きっと帰っちゃえばいいんだろうけど。 「玄関ホールへの行き方分からないんですか? ここの校舎ちょっと複雑ですもんね。さっきもオカルト同好会の人に連れて来てもらってたでしょ?」
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