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気が付くと私はぽたぽたと涙をこぼしていた。
意味が分からない。
頭によぎる美由希の言葉。
『運命の一目惚れとかあるかもよ~!』
『それは恋です! 一目惚れと認定します!』
美由希は恋に恋する乙女。
私が共学の高校に転校するって話した瞬間から、美由希の話題はほぼお互いまだ当事者にはなれてない恋バナになった。
転校初日の報告を早速ラインですると、運動部男子の件で美由希のテンションは急上昇。
「そうかな? でも顔もちゃんと分かんないし、何年生かも知らないし」
『そんなの関係ないでしょ! 涙が勝手に溢れちゃうなんて運命の一目惚れだよ!』
「そうなのかな……」
あの瞬間は本当にどうなっちゃったんだろうってくらい身体も頭も痺れて不思議な感覚だった。
でも家に着いたら何だか他人事みたいで自分の体験ていう自覚があんまりない。
そもそもあの運動部男子が本当に私を見たのかも怪しい。
下の階に友達、それこそ彼女がいたのかもしれないし。
『私的には大谷君も捨てがたいけどね』
確かに大谷君は普通にいい感じの男子だ。
イケメンだし、頼れそうだし、しばらくは何かとお世話になりそう。
『あ~でもマリンバ諒も気になるね』
「マリンバ諒って!」
つい吹き出しちゃう。
『人懐っこいワンコキャラの後輩男子って感じじゃない?』
「まだ分かんないよ。ちょっと生意気そうではあるけどね」
人懐っこいってキーワードで市堰君の顔が思い浮かぶ。
今の今まで忘れてた。
そういえば市堰君、というかオカルト同好会については完全にはしょってしまった。
ま、いっか。
大谷君がオカルト同好会でも私には関係ないし、市堰君とはもう話すこともないだろうし。
それに今は恋愛よりも吹奏楽部を少しでも早く私の日常にしたい。
恋愛は私にとってまだ非日常だもの。
『また明日も報告待ってるよ! おやすみ~』
ピコン、ピコンと愉快なスタンプが続く。
私もおやすみのスタンプを送り、うーんと背伸びをしてベッドに横たわる。
しばらくゴロゴロするつもりが疲れていたのか気付けば朝だった。
やっぱ緊張で精神的に疲れちゃってたんだな。
まだまだドキドキするけど楽しくなりそうな予感も沢山ある。
早く私の新しい日常を完成させなきゃ!
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