3・新しい日常

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 始業式翌日からせわしなく授業は始まった。  進み具合が心配だったけど、どちらかというと前の学校の方が先にいってるみたいで一安心。  大谷君は変わらず気にかけてくれるし、クラスのみんなも明るい感じでこの雰囲気は嫌いじゃない。  ただ全体的にノリが良すぎてちょっとついて行きづらいところもある。 「今日は行けそう?」  放課後、大谷君が声をかけてくれる。  男子の優しさにまだ免疫力低めな私はドキッと胸が跳ねる。  面倒見、面倒見がいいだけだからね。 「えっと……」  いつまでも案内してもらう訳にはいかないと思うけど、今日もう一回くらいならお願いしてもいいのかな……。 「朔也! 大変!」  この声とテンションは市堰君だ。  私と大谷君は一緒に振り返り、大きく手招きする市堰君を見る。  男子なのにその安定の可愛さは何なの? 「だ、大丈夫だよ。ありがとう」  私がぎこちない笑顔でそう言うと大谷君は少し眉を八の字にして微笑み市堰君と行ってしまった。  まだ男子に対するコミュニケーションには慣れない。  自分で笑顔が引きつってるのが分かる。  よし! と心の中で気合を入れて私は音楽室へと向かう。  まずは諒君に自然に笑いかけられるようになろう!  後輩ならまだ大丈夫な気がする。  音楽室がある実習棟へつながる渡り廊下が一階と二階にしかないことを把握できてなくて、無駄に校内をうろつきようやく音楽室へ辿り着く。  もう準備が始まっちゃってるよ。  新人のくせに出遅れちゃってなんか気まずいな。 「架帆先輩!」  誰にでも懐いちゃう美由希んちのワンコみたいに駆け寄ってくる諒君の笑顔がやっぱり眩しい。 「おはようございます!」 「お、おはよう。諒君」  あれだけ意気込んだのに全然自然に笑えてないぞ、私。  でも声をかけてもらったおかげで身体は自然と音楽室に吸い込まれる。  何?  音楽室へと足を踏み入れた瞬間フワッと何かを感じた。  意識が窓に、ううん。  グラウンドに向く。  いやいやいや。  今はそっちに気をやってる場合じゃない。 「遅くなっちゃってごめんね。新人はまず何をする感じなのかな?」  迷子になってたんですか? ってニヤッとしてから諒君は部活が始まる流れを教えてくれた。  大体今までの経験と変わらない。  明日からはちゃんとやれそう。  迷子にならなければ。
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