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まだまだ夏本番と張り切る太陽のせいで今日も朝から暑苦しい。
今日は二学期の始業式。
九月って字面は何だか秋っぽいけど、昨日まで夏休みだったのにいきなり涼しげな秋が来たりはしないよね。
でも私が暑いと思うのは全身が本当に熱くなってるから。
高校二年生の二学期から転校だなんて中途半端すぎる。
今朝家を出る時から、ううん。
昨日の夜から心臓がバクバク、ギュッの繰り返しでもうそろそろオーバーヒートしちゃいそう。
そもそも私は変化に弱い。
それを思い知らされたのは小六の時。
両親から中学受験の話をされたんだけど、正直、全く、全身全霊で意味が分からなかった。
だって私は一生ずっと小学生だと思ってたから。
私は自分が小学生というキャラ設定で生み出されたと思ってた。
お母さんはお母さん、お父さんはお父さんというキャラ設定で、この世界に生まれた瞬間から大人なんだと思ってた。
だって小学生って六年間もあるんだよ?
六年間も小学生やってたらそう思っても不思議じゃなくない?
中学校生活も慣れた頃、今は親友の美由希にそう言ったら壮大に笑われたっけ。
『おもしろすぎる! 架帆はキャラ変したんだ!』
両親は教育熱心という訳ではなくて、単に選択肢として色んな中学校の情報を与えてくれたみたいだった。
だから公立の中学でも全然良いよって言われたけど、私は中高一貫教育の学校を選んだ。
だってまた六年間変わらずにいられるから。
高校生になるというキャラ変イベントは発生するけど、校舎は隣だし生徒は当然、部活動のメンバーだって変わらない。
これならまたしばらく安心して過ごせる。
そう思ったのに高校生活も残り約半分ってところで転校だなんて!
高校生活が半分近く終わってるってことは学年全体、そしてクラスの雰囲気も出来上がっちゃってるでしょ?
そんな中に放り込まれる気持ちにもなってよ、お父さん!
お父さんが転勤になっちゃったのはお父さんのせいじゃないけど、文句を言わずにはいられないよ。
お父さんのバカバカバカ! なんて呪いの呪文みたいに心で唱えながら、担任の先生の後ろを重い足取りで歩くことしばらく。
遂に今日から我がクラスとなる2-Bの前に到着してしまった。
「大丈夫ですか? 竹内さん」
「ひゃい!」
あぁ……。
噛むだけじゃなく声が裏返ってしまった。
変化することは今でも苦手でこんなシチュエーションはとてつもなく緊張しちゃうけど、それなりに培ってきた経験で多少は図太くなったはず!
先生がガラリと扉を開けて教室に入って行く。
私は声をかけられたら入るように言われているので一旦待機。
足が震えてきた。
緊張マックス!
開けっぱなしの扉から教室のざわめきが聞こえる。
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