40人が本棚に入れています
本棚に追加
それは私も大いに思う。
ヘタな格好して笑われたくないし。
思わず何度も頷く私。
チラッと振り向いた大谷君は少し頬を緩めたように感じた。
近くで見るその顔は改めてイケメンだ。
涼し気な切れ長の目にスッとした鼻筋。
純和風な印象で無駄のない凛とした印象を受ける。
『イケメン情報と突発イベントは必ず報告するべし!』
鼻息も荒くそう言う美由希の顔がまたも浮かんだ。
大谷君のことは報告案件?
廊下の端、階段の前まで来て大谷君は足を止める。
「両端にトイレがある。その手前が階段な」
普通に説明してくれてるだけなんだけど、男子に対する妙な緊張感が解けなくてカタコトな返事しか出来ない。
「う、うん」
「うち、普通科、情報処理科、事務科、商業デザイン科、薬業科っていっぱいあるだろ。で、一応うっすらとだけど対立? 確執? 的なものもあって。オレらは普通科だから西側のトイレの方がいいかな。東側は主にデザインと薬科が使うから、中で会うと何で? って顔される」
そんなことがあるんだね。
教えてもらってよかった。そういう暗黙の了解的なことって破ると怖いもんね。
「一階西側の女子トイレには花子さんがいるよ!」
いきなり陽気な声が静かな廊下にこだました。
私の後ろから突然姿を現したのはすごく可愛い子。
大きな目にこぢんまりとした鼻、ふっくら薄紅色の唇にまあるいほっぺ。
完全に童顔で小学生って言われても信じちゃうくらい。
でも身長は私よりちょっと大きくてギャップに感じちゃう。
服もロリータとか似合いそうなのにボーイッシュな感じで、髪型もショートカットがちょっと伸びちゃったくらい。
「江、授業は?」
「転校生に学校の不思議スポットを紹介する以上に大事なことってある!?」
二人は友達なのかな?
しかしテンション高いなこの子。
「こんにちは! 初めまして。ボクは市堰江、こっちは大谷朔也。ボクたちオカルト同好会です! よろしくね!」
満面の笑みで差し出される両手。
これはどうしたらいいの!?
ていうかボクって、男子!?
ていうかオカルト同好会??
「竹内困ってんだろーが。お前はもう少し他人との距離を考えろ」
固まってしまった私に助け船を出してくれる大谷君をよそに市堰君は続ける。
「竹内なにちゃん?」
「架帆です……」
名前を問われれば条件反射で答えてしまうのは人間のサガなのかな。
しかも何でか敬語になっちゃってるし。
最初のコメントを投稿しよう!