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かわいい羊のお話
エリリカは、ハードカバーの絵本を手に、自宅に戻った。
最初はあまり興味を持たなかった。
風呂に入って食事をし、寝る前に、意外にキレイに装丁されたあの本を、手に取った。
「天童さんが描いた絵本、か。謎というか怪しいんだよね、あの人」
面白半分に表紙をめくってみて、目を丸くした。
「何これ。スゴイ……。上手じゃん。私、割りと好きかも」
絵は、淡いタッチでありながら、躍動感があって生き生きとしていた。
いかにも子供が手に取りそうな絵柄だった。
主人公は、なぜか羊だった。
-昔々、ある国のちょっとした海の見える丘に作られた牧場で、羊が100頭飼われていました。
羊たちは、心優しい牧場主とちょっと恐い羊飼い「ピーター」に「可愛がられ」、表向きは皆仲良く、平和に暮らしていました。
牧場は、高い高い有刺鉄線で囲いがあって、羊たちはそこから出ることはできませんでした。
「何? ちょっと子供向きじゃないんじゃ? 有刺鉄線って……なに?」
エリリカは、急に眠気が襲ってパタリとその本を閉じた。
と同時に、深い眠りに落ちた。
(いや、催眠効果抜群だわ、この本……。さすが、羊の本)
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