48人が本棚に入れています
本棚に追加
脱藩
「そして、俺は脱藩することを試みた。藩を抜けて、何の庇護も、縛りもなく、暴れまわってみたかった」
「そうそう、ヒロと同じだわ。サエモンは、それを見てあの羊の話をかいたのね」
サエモンはうなずいた。
だが、当初の物語は、脱出は失敗し、雄羊は肉になって食べられる運命になっていた。
「前世の俺は、脱藩を試みたところで国境で役人に捕まってしまったのさ。それで、国元に送り返されて……」
サエモンは、コーヒーをすすりつつ、俯いて公園の地面をぼんやりと眺めていた。
「どうなったの?」
「脱藩は重罪だったから。切腹も認められず、斬首だ」
「切腹……何だっけ?」
ずるっ
いつもはクールなサエモンが、ずっこけた。
「お前、よくうちの高校に入れたな」
「あはは、私って運が良いのよね」
エリリカは苦笑いして誤魔化した。
最初のコメントを投稿しよう!