脱藩

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脱藩

「そして、俺は脱藩することを試みた。藩を抜けて、何の庇護も、縛りもなく、暴れまわってみたかった」 「そうそう、ヒロと同じだわ。サエモンは、それを見てあの羊の話をかいたのね」  サエモンはうなずいた。  だが、当初の物語は、脱出は失敗し、雄羊は肉になって食べられる運命になっていた。 「前世の俺は、脱藩を試みたところで国境で役人に捕まってしまったのさ。それで、国元に送り返されて……」  サエモンは、コーヒーをすすりつつ、俯いて公園の地面をぼんやりと眺めていた。 「どうなったの?」 「脱藩は重罪だったから。切腹も認められず、斬首だ」 「切腹……何だっけ?」  ずるっ  いつもはクールなサエモンが、ずっこけた。 「お前、よくうちの高校に入れたな」 「あはは、私って運が良いのよね」  エリリカは苦笑いして誤魔化した。 
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