5人が本棚に入れています
本棚に追加
令和
「うわ~、渋滞で100分って表示されてるな」
「もう!だから行きたくないって言ったのに!!」
県内の100万ドルの夜景を助手席に座る彼女にどうしても見せたくて車を走らせていたが、元号が変わり大型連休の真っ只中。目の前、いや四方八方にはゆうに100台くらいはいるのでは?と数えるのが億劫になる程の数の車のテールランプが燦々と光を放つ。
そんな状況に、元々出かけることに乗り気ではなかった彼女が元より悪かった機嫌を益々悪くさせる。
だが、幾度となくデートを断られ続けて漸くOKをもらえた今日は俺にとっては想いを伝える千載一遇にして最後のチャンス。彼女に気付かれないようトランクに隠している箱をルームミラー越しに盗み見る。
進んでは止まりとノロノロと進み、目的地に着いた時は予定よりも2時間もオーバーした22時だった。
「100万ドルの夜景もやはり省エネか、ちょっと落ち着いているな。」
「そうだね」
目下に広がるは七色にライトアップされた明石海峡大橋、街の街灯、未だに渋滞にはまって動けない数百台の車のライト。夜景を見ながら彼女に笑いかけるが、彼女は興味無さげに携帯を片手に適当に返すだけ。
そんな彼女の態度にほんの少しだけ寂しさを覚えた。
「信じられないだろうけど、この風景が一度大震災で焼け野原になったんだよ」
「は?それくらい知ってるし。私が産まれる前でしょ?」
俺の言葉にチラリとこちらを見ながら返事はくれるものの、やはり彼女は携帯片手につまらなさそうにしている。
「百々花、結婚おめでとう」
いつまでも興味無さげにしている彼女に申し訳ないから仕方がなく一番伝えたかった言葉を口に出す。
最初のコメントを投稿しよう!