北州の少年

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北州の少年

 春。見事な桜が咲き誇る城門の前には、人だかりができていた。  わらわらと人々が群がり見上げる先には、大きな高札がある。  掲げられているのは新しい法令でも罪人の手配書でもなく、三年に一度の大発表ーー官吏登用試験・科挙の合格者の名が載せられた高札である。  ある者は雄叫びをあげ、ある者は泣き、ある者は高笑っている。この世の終わりみたいな顔をしている者もいる。  それぞれの結果が如実に見て取れる光景である。  絶望で立ち上がれない人々はさておき、中でもとくに話題に上がっているのは上位三名ーー通称三魁と呼ばれるーーの名であった。  状元(じょうげん) 李柴炎(りさいえん)  榜眼(ぼうげん) 汪天璃(おうてんり)  探花(たんか) 星彗斗(しょうけいと)  いずれも十代という、驚くべき若さ。特に状元は、平民の出の名も無き少年が名門大貴族の子息たちを抜いて及第したということで、多大なる注目を集めていた。
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