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一日中ほぼ座りっぱなしで同じ体勢だったため、肩とか首とか足とか、身体のあちこちが痛む。
柴炎はぐっと伸びをして、ひと息つきながら、込み上げてくる欠伸を噛み殺した。
初めのうちは軽口を叩きながら作業をしていたものの、今となっては皆喋る気力もなくなって、よくわからない唸り声や「疲れた〜」など時々弱音を溢すぐらいで、室内にはどんよりと重たい空気が立ち込めている。
書類の山はだいぶ小さくなったが、全部片付くにはもう少しかかりそうだ。
「ーー失礼いたします」
そのときだった。深刻そうな顔と声が、扉を開けて入ってきたのは。
「沖文……?どうした?」
「彗斗様。急ぎお伝えしたいことが」
息を切らしつつ、やや口早にそう言うと、沖文と呼ばれた星家の使者と見られる男は、彗斗のもとへ行くと、その耳元で何事かを囁く。
それを聞くにつれ、彗斗の表情はだんだんと険しいものになってゆく。
どうしたんだろう、と思いながら様子を見ていると、聞き終えた後も難しい顔で黙り込んでしまう彗斗。
「いかがなさいますか?」
「…………すまないが、今は手が離せない」
沖文は物言いたげな顔で口を開きかけるが、けれどぐっと言葉を飲み込んで、歯がゆそうに頷く。
「わかりました。では、そのようにお伝え致します」
「ああ。後日、ひと段落ついたらそちらへ向かう、と」
「承知致しました」
使者は一礼したのち、失礼を述べて部屋を後にしようとするーーのを、柴炎は思わず呼び止めた。
「ちょっと待ってください」
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