行列のお隣さん

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行列のお隣さん

行列に並ぶのは好きではない。 けれどもどうしても並ばなくてはいけないときもある。 それが今だ。 博多豚骨ラーメン。 一日限定替え玉無料デー。 替え玉をお腹いっぱい食べる。こんな夢のようなことがあるだろうか。朝からお腹を空かせてきた。周りの猛者たちも同じらしく、みな集中したような表情で並んでいる。 「行列、苦手なんだよなぁ・・・」 「あ、付き合わせてごめんね?」 白いTシャツ姿の男の呟きに、隣に立っていた女が本当に申し訳ないようにこたえた。 「どうしてもお腹いっぱい食べてみたくて」 ちょっと上目遣いでおねだりするような声で謝る女に、まあいいけど・・・と男は女の髪を撫でる。そのついでに暗い茶色の毛先に指を絡める。 何だよこのカップルめ。ラブラブ見せつけんな。 ラーメン屋の行列は基本的に一人で並んでいる人が多い。 二人でもっとおしゃれなレストランカフェでもどこでも行けばいいだろうと内心舌打ちをする。
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