カフェのお隣さん

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カフェのお隣さん

待ち合わせに遅れると連絡が入った。 「近くの店でお茶でも飲んで待ってて」とあったで、とりあえずコーヒーチェーン店に入る。ホットのカフェオレを受け取り、カップルの隣に座った。 カフェオレは思いの外熱く、上に牛乳の薄い薄い膜ができている。砂糖をその膜の上に乗せると、重みでその膜が下へ下へと沈んでいった。 「もしよかったら、なんだけど」 牛乳の膜がカップの下へと沈んでいくのを見ていると、隣の会話が耳に入る。若いカップルだ。デートだろうか。 「今度一緒に旅行に行かない?」 「旅行かぁ・・・」 男の提案に女がうーんと唸りながら、アイスカフェオレのストローをくるくる回す。氷の音が涼やかだ。 「・・・旦那に確認してみる」 「・・・え?」 「・・・・・・え?」 女からの申し出に男の声が震える。 「だって、彼氏いないって・・・」 「彼氏いないけど、旦那いるよ? あれ、言ってなかった?」 私はすぐにスマホを取り出し、待ち合わせに遅れている友人に連絡する。 『来る時間、ゆっくりでいいから焦らないでね!!!!』 隣のカップルが固まっている。 私もホットのカフェオレを見つめて息を潜めた。 ・・・・・・・・さあ、修羅場の時間だ。
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