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「いつもありがとうございます。」
レセプションクラークの女性にお礼を言って、絵里はその大きな自動ドアの中に入っていった。
自動ドアの先には先ほどの煌びやかなエントランスホールから一変、落ち着いた和の雰囲気が漂うホールが広がり、その床一面には紅い絨毯が敷かれている。
この絨毯、土足で歩いて良いのかと心配になるほどの高級感が漂っていて、基本の紅色に繊細な幾何学模様が織り込まれ美しい。
初めてここに来た時は小学生だった。あの時は自動ドアを越えて直ぐに思わず靴を脱いでしまい、レセプションクラークに「土足でお進み下さい」とたしなめられた。
あれから10年経った今でも靴を脱ぎたくなる。
雨の日は靴を脱がないにせよ、やはり絨毯を汚したくなくて踵を持ち上げつま先立ちで歩いている。
それ程までに高級感が漂い過ぎる絨毯なのだ。
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